岡山での授業実践を通じて、「けテぶれ」「QNKS」「心マトリクス」が子どもたちの自律的な学びをどう支えるかを探ります。
QNKSによる思考の型化や、個別最適と協働的な学びの一体化など、具体的な事例を解説します。
間違いを「ダイヤの原石」と捉え、学習方法そのものを探究する深い学びの姿を紹介します。
このチャンネルでは、全国の子どもたちが自らの人生を自分で舵取りする力を、公教育でつけるための教育論についてお話ししていきます。 今回は、先日訪れた岡山での実践報告の続きをお届けします。
前回の放送では、授業のパターン化や、社会科・理科におけるQNKSを活用した読み取り、そしてQNKSとけテぶれを連動させることの重要性などについてお話ししました。今回は、各学年の具体的な実践の様子から見えた、さらなる学びの可能性について深掘りしていきます。
### QNKSを「汎用的な型」として使いこなす
#### どの授業でも使えるワークシートを目指す 4年生や5年生のクラスでは、QNKSがワークシート形式で活用されていました。これをさらに発展させるためには、特定の単元専用のワークシートではなく、QNKSの枠組みだけが書かれたシンプルなシートを、どの授業でも汎用的に使えるようにすることをおすすめします。
こうすることで、子どもたちは次第にワークシートがなくても、ノートにQNKSの型を再現できるようになります。最終的には教科書とノートさえあれば、自分で学びを進められる子に育っていくでしょう。
#### 「組み立て」の型を指導し、思考を可視化する 5年生のクラスでは、授業の冒頭10分でQNKSの「K:組み立て」の指導、つまりロジックの組み立て方の指導がしっかりと行われていました。この指導があることで、子どもたちは見通しを持って論理を組み立てることができ、非常にスムーズな学びが展開されていました。
また、4年生のクラスでは、子どもたちのノートをスクリーンに映し出し、どのように思考を「組み立て」たのかを共有する場面がありました。これは「図考法(図で考える方法)」の実践であり、素晴らしい取り組みです。
- 友達のノートを参考にできる - どのように考えればよいのかが一目でわかる - 思考のプロセスを真似できる
このように、ノートを相互参照する機会を増やすことで、子どもたちはロジックの型、つまり「組み立て」のパターンをどんどん吸収し、進化していきます。
4年生は研修の最後にポスター発表も行っていました。市の方針で推奨されている新聞記事の読解活動にQNKSを組み込み、論理的に文章を読み解く練習を徹底していました。これも、市の方向性と実践をチューニングした見事な取り組みです。経験と練習が思考力を向上させる上で、何よりも大切になります。
### 6年生の実践:「キラキラタイム」のタイミング 6年生の算数の授業では、開始25分ほどで「キラキラタイム(自律的に学習を進める時間)」が設けられていました。子どもたちの集中力を考えると、この時間はもう少し早められると、さらに効果的かもしれません。
授業開始から25分も経つと、どうしても学習から脱落してしまう子が出てきます。そうした子にとって、その後の時間は意味のないものになりがちです。活動の早い段階で個別に関わり、形成的に評価を返しながら、子どもたちの思考を持続させる支援が重要になります。
### 間違いは「宝物」ではなく「ダイヤの原石」である
3年生のクラスでは、先生が「間違いは宝物だよ」という言葉かけをされていました。これは子どもたちの心理的安全性を確保する上で非常に大切な合言葉です。
このメタファーをもう一歩進めて、子どもたちの学びをさらに深める提案をしたいと思います。
それは、間違いは「宝物」ではなく「ダイヤの原石」だと捉えることです。
間違えた直後は、ただの石ころにしか見えず、価値があるとは思えないかもしれません。だから子どもたちは落ち込んでしまうのです。しかし、その石ころは、磨くことで光り輝く宝石になります。
では、どうやって磨くのか。それがけテぶれの「ぶんせき(分析)」と「れんしゅう(練習)」です。苦手なことや間違えたことの原因を分析し、練習を重ねることで、それは初めて価値ある「宝物」に変わるのです。
この考え方は「成功」にも応用できます。小さな成功も、分析と練習によってさらに磨きをかけることで、「大成功」へと成長させることができるのです。
### 個別最適な学びと協働的な学びが一体化する教室
3年生のクラスでは、QNKSで自分の考えを「S:整理」した子どもたちと、先生が対話する姿が印象的でした。子どもが自分の考えを表現したからこそ、先生は「どうしてそう考えたの?」「こういう場合はどう思う?」と、より深い対話へとつなげることができます。QNKSが、質の高い対話を生む土台となっていたのです。
また、あるグループの子どもたちが「見て!ここまで自分でできたんだよ!」と、嬉しそうにワークシートを見せ合い、教え合いながら学んでいる姿は、本当に素敵でした。
#### 心マトリクスで学びのモードを自己選択する このクラスの素晴らしさは、一人の女の子に「今、どんな時間なの?」と尋ねたときに、より明確になりました。彼女は教室に掲示された心マトリクスを指さしながら、こう説明してくれたのです。
> 「今はキラキラタイムです。月の時間(好きで、一人で集中して考える時間)と、太陽の時間(友達と関わって助け合う時間)を、自分で必要に応じて行ったり来たりしながら、自分の学習を進める時間です」
これこそが、私が理想とする「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実の姿そのものです。
一人で学びたい子もいれば、友達と学びたい子もいます。その時の学習内容や自分の状況に応じて、子ども自身が学びのモードを自由に選択できること。これが真の「個別最適な学び」です。
- 学習内容の最適化:けテぶれを回し、自分の課題(最適な学習領域)を見つける。 - 学習方法の最適化:一人で学ぶか、友達と学ぶかなど、学びのモードを自分で選ぶ。
### 「学習方法」自体を協働的に探究する
「協働的な学び」は、単に学習内容を教え合うだけにとどまりません。「学習方法」について協働し、探究するという、より高次の学びへと発展させることができます。
例えば、「本番のテストで緊張して計算ミスをしてしまう」という共通の課題を持つ二人がいるとします。彼らは次のような協働的な学びをデザインできます。
> 二人で時間を計って競争する。ただし、ただ速さを競うのではなく、1問間違えたら10秒加算するというルールを設ける。これにより、プレッシャー(焦り)のある状況で、いかにケアレスミスを防ぐかという実践的な練習が可能になる。
これは、競争という仕組みを意図的・道具的に活用した、学習方法についての協働です。 他にも、先生役と生徒役に分かれてミニ授業を行ったり、生徒役が先生役に本質的な質問を投げかけて学びを深めたりと、多様な方法が考えられます。
こうした優れた学習方法を、見つけるたびに教室に掲示し、名前をつけてストックしていくのです。そうすることで、「より良い学び方とは何か?」を、子どもたち自身がすべての授業を通じて探究していく、そんな素晴らしい学習文化が生まれていくでしょう。
今回ご紹介した岡山の先生方の実践は、子どもたちの自律的な学びを育む上で、非常に多くの示唆を与えてくれるものでした。
なお、当日私が行った基調講演(次期学習指導要領とけテぶれ・QNKSの関係性について)の内容は、すべて無料でnoteの記事として公開しております。ご興味のある方は、ぜひそちらも併せてご覧ください。