この記事では、自由進度学習における教師の役割や具体的な指導法について、リスナーからの多様な質問に回答します。
「けテぶれ」や「QNKS」といったツールを効果的に活用し、子どもたちが「粘り強く」主体的に学ぶための価値付けや具体的な手立てを解説します。
学力差のあるクラスや意欲の低い子どもたちへのアプローチ法など、各教科での実践的なアイデアが満載です。
はじめに 今回は、自由進度学習に関する講義のコメント返し会です。リスナーの皆様からいただいた、現場での具体的な悩みや質問に順番にお答えしていきます。
Q&Aセッション
カフカさんからの質問:シートの使い分けと黒板の活用法
教師の役割は「線路」ではなく「滑走路」 「教師が線路を引いてはいけない」とよく言われますが、かといって子どもたちを野放しにしてはいけません。教師の役割は、子どもたちが自らの力で飛び立てるように、滑走路を整備してあげることです。
また、自由進度学習だからといって教師が何も言わないわけではありません。特に「大計画シートを見ましょう」「けテぶれを回しましょう」といった学び方の部分については、私も口酸っぱく言い続けていました。
「大計画シート」と「けテぶれシート」の使い分け ご質問いただいたシートの使い分けについて解説します。
- 全部入りシート(書籍181ページ)
- ダブル使い(大計画シート+けテぶれシート)
どちらにも一長一短がありますので、クラスの実態や目指す学習の構造に合わせて選んでいただければと思います。
黒板・ホワイトボードの役割は「思考の共有」 黒板は、計画的に「板書」をするために使うことはほとんどありませんでした。主な使い方は以下の通りです。
- 子どもたちが自由なメモに使う
- QNKSをやってみせる
- 必要なことを手書きする
- 掲示物を貼る
黒板やホワイトボードを使う上で重要なのは、ノートとの役割分担を子どもたちに意識させることです。
- 黒板・ホワイトボード
- ノート
黒板で共有した大事なことは、必ずノートに足跡として残すように指導していました。
工藤さんからの質問:算数におけるQNKSの活用法
算数でQNKSを活用するアイデアですね。ご提案の「文章問題をNKして立式する」「説明の時にQNKSをする」は素晴らしいと思います。
「算数の幹」の活用 算数の文章問題に特化したQNKSの実践として「算数の幹」というプリントがあります。これは、私が教師2年目、3年目に実践し、学力テストの成績が非常に上がった実績のある強力なツールです。 「算数の幹」で検索すると情報が出てくると思いますので、ぜひ調べてみてください。毎日の宿題にするだけでも、文章問題が苦手な子を確実に減らすことができます。
手段が目的化しないための注意点 QNKSはあくまで問題を解いたり、説明したりするための「道具」です。常にQNKSをすることが目的にならないよう、以下の点を意識すると良いでしょう。
- 分からなければQNKS:「けテぶれ」と同じで、困ったときに使うツールという位置づけです。
- できているなら、まず説明:すでに解ける子には、まず答えまで出させます。その上で、「その解き方をNKして説明してごらん」と促すと、思考の流れが自然になります。
単元全体のQNKS 単元の冒頭で、教科書の小見出しなどを抜き出しながら、単元全体の構造をQNKSで組み立てるという実践も非常に有効です。 最初に全体像を把握することで、子どもたちは見通しを持って学習を進めることができます。
- サンドイッチ形式の活用
このように、単元の最初と最後に大きなQNKSを回すことで、学びがより深まります。
ムータロさんからの質問:「粘る」ことの価値付け
算数が苦手で諦めている子、周りを頼れない子が多いとのこと。そうした状況では、「粘る」ということへの価値付けが非常に重要になります。
「けテぶれ」は目的ではない 「けテぶれ」や「QNKS」といった細かい知識や方法は、自分で学ぶことの楽しさや価値観が伴って初めて意味を持ちます。 まずは、「自分で問題が解けた」「自分で丸付けができた」「友達に頼れた」といった、素朴で基本的な学習の喜びを子どもたちが感じられるような声かけや仕組み作りが大切です。
成長の種は、まず「根」から伸びる 最近、水耕栽培をしていて気づいたことがあります。種から最初に出てくるのは、芽ではなく根なのです。目に見える小さな双葉が出てくる頃には、その下には何十倍もの長さの根が力強く張っています。
子どもたちの学びも同じです。すぐには結果(芽)が出なくても、粘り強く考えている時間は、目に見えない学びの根を深く、力強く張っている時間です。このことは、メタファーではなく事実として子どもたちに伝えてあげたいと考えています。
イタルさん、広瀬さん、チキンさんからのコメントと学び
「できない=かわいそう」ではない 教師が「できない子はかわいそう」と先回りして感情を判断してしまうと、子ども自身もそう思うようになります。「できない」という事実に、「かわいそう」という価値判断を勝手につけてはいけません。 「できない」のではなく、「今、学びの根を張っている最中ですごいね」「頭がフル回転していて頼もしいね」と、事実をポジティブに解釈し、フィードバックすることが大切です。
説明できるレベルへのインセンティブ テストで100点を取るのは「できる」の段階です。その上の「説明できる」レベルに到達した子には、プラスアルファの評価を与えることが重要です。
- プラス10点ルール
このルールを全教科共通にすることで、「説明すること」に価値が生まれ、学びが深まります。さらに、子どもたちから「類題を作るのもプラス点にしてほしい」といった提案が出てくることもあり、学習はどんどん発展していきます。
忍者さんからの質問:学習意欲が低いクラスへの手立て
学年崩壊を経験し、「やればいいんでしょ」という態度の子どもたちが多いクラス、大変な状況だと思います。しかし、そうした子どもたちも、本来は自分の人生の主人公です。けテぶれやQNKS、心マトリクスは、そのことを思い出させるための実践です。
教師のスタンスは「提案」と「フィードバック」 私たちは、子どもたちに目的・目標・手段を磨き上げて提案することしかできません。その提案を受けて「挑戦する」か「しない」かを決めるのは子どもたち自身です。
挑戦してくれた子には、その挑戦を価値付け、より良くするためのフィードバックをします。このキャッチボールが学びの本質です。挑戦しないという選択をされたら、無理強いはできません。その事実を誠実に伝えることが重要です。
教科書が終わらない子への具体的な手立て 教科書レベルでも終わらない子がいる場合、複合的な手立てが必要です。
1. 全体像を見せる * 残り時間と残りのページ数、今のペースを具体的に示し、「どうする?」と問いかけ、ペース配分を考えさせます。 2. 時間を確保する仕組みを作る * 宿題で補う。 * 図工や読書など、早く終わった子が生まれる時間や、自由に使える時間を「やるべきことをやる時間」として活用させる。 3. 学習の効率化を教える * 全部の問題をやるのではなく、色のついた問題や演習問題の偶数番号だけなど、エッセンスとなる問題に絞って取り組む方法を教えます。 * まずは「やってみる」の段階を全範囲で終わらせることを目指します。 4. 価値付けとフィードバック * 「できていない」のではなく「折れずにやろうとしている」姿を価値付け、「根が張っているね」と伝えます。 * 頑張りをシールやポイント(トリプルスターなど)で可視化し、承認します。
上位層へのアプローチ 逆に、すべてを完璧に理解している上位層には、「全部やらなくていい」と伝えます。
- キーとなる問題だけを解き、残りのスペースでその問題の解説を書く。
- 単元のまとめページから先に取り組み、できなかった問題だけを通常ページに戻って学習する。
こうして生まれた時間で、「みんプリ(みんなのプリント)」作りや探究的な学びに挑戦させることができます。
なおさんからの質問:国語の小単元の進め方
国語の「新聞を読もう」のような小単元では、進度をコントロールする必要があまりないため、大計画シートは作っていませんでした。 学期ごとに、以下のように段階的にアプローチしていました。
- 1学期:教師が一斉指導でサクッと終わらせる。
- 2学期:小単元を丸ごと子どもたちに任せてみる。「自分で読んで、問いに答えて、ノートにまとめて提出する」という学び方に挑戦させる。
- 3学期:子どもたちが隙間時間を見つけて各自で進める。単元配当時間内に終わらない可能性を伝え、タイムマネジメントを意識させる。
このように、徐々に子どもたちの自律性を高めていくことで、最終的には完全に自分のペースで学習を進められるようになります。
まとめ 今回は多くのご質問にお答えしました。現場での試行錯誤の一助となれば幸いです。
最後に、お知らせです。10月からVoicyの収益配分が変更されることに伴い、大変申し訳ありませんが、プレミアムリスナーの料金を数百円値上げさせていただく予定です。何卒ご理解いただけますと幸いです。
また次の放送でお会いしましょう。