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書籍『けテぶれ宿題革命』総解説:子どもが自立した学習者になる方法

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『けテぶれ宿題革命』は、子どもが「学び方」を学び、自立した学習者になるための具体的な方法論です。

「計画・テスト・分析・練習」のサイクルを回すことで、やらされるだけの勉強から脱却し、学習を自分事として捉えられるようになります。

本書は、宿題を意味のある楽しい時間に変え、これからの時代を生き抜く力を育むための教師向けガイドです。

はじめに:なぜ今『けテぶれ宿題革命』なのか この企画は、書籍『けテぶれ宿題革命 子供が自立した学習者に変わる』について、その全ページを徹底的に解説するものです。 この本が出版されてから約5年が経ち、今では11刷、総部数は25,000部を超えるほど多くの方に手に取っていただいています。

時代にフィットした情報として広がっている手応えを感じており、そろそろ改訂版も視野に入れながら、改めて本書に込めた思いや内容を深くお伝えしていきたいと思います。

「けテぶれ」がもたらす3つの変化 本の表紙をめくると、まず「けテぶれで宿題がこんなに変わる」というメッセージが書かれています。

1. 教師が毎日宿題のプリントを印刷しなくていい 2. ノート1つで自分で学びのPDCAを回す 3. 「学び方」を学ぶのが「けテぶれ」です

これは、働き方改革としても非常に有効です。コロナ禍で大量のプリントを印刷することに違和感を覚えた先生方が、「けテぶれ」に出会ってくださったという話もよく聞きます。

授業準備などの雑多な悩みは、子どもたちを学習者として自立させていくことで、驚くほど少なくなります。 もちろん、その分、深い教材理解はより一層大切になります。教材について深く理解した上で、子どもたちに学習を任せ、教師がいかに振る舞うかに注力できるようになるのです。

なぜ「漢字学習」から始めるのが最適なのか 「けテぶれ」の導入として、本書ではまず漢字学習から始めることを提案しています。 その理由は、漢字が他の教科に比べて、深い教材研究の有無が子どもたちの学びに大きく影響しにくいからです。

もちろん、部首や用法、熟語など深めようと思えばいくらでも深められますが、学習分野としてシンプルであるため、子どもたちが自分自身で向き合いやすいのです。

この漢字学習を通して、先生方には以下の感覚を掴んでいただきたいと考えています。

  • 子どもに学習を任せるとはどういうことかを体験的に学ぶ
  • 指導していない範囲に子どもたちが自分で進んでいく学習展開に慣れる
  • 子どもが先に進み、教師が後から伴走するという新しい指導の形を身につける

子どもたちが自分で学びを進めていく状況に、教師として耐え、かつその場をコントロールできるか。これは指導観の大きなゲームチェンジです。この感覚を掴むことが、子ども主体の学びを実現するための第一歩となります。

宿題の「めんどくささ」を「楽しさ」に変える 「毎日の宿題のプリント用意と丸付けにうんざり」という悩みをよく聞きます。 しかし、「けテぶれ」は単純に丸付けをしなくていい、という話では全くありません。むしろ、思考停止で全員のノートにハンコを押す作業よりも、一人ひとりのノートを深く読み込み、そこにある価値を洞察することが求められるため、ある意味では大変になります。

楽ではないけれど、楽しい。それが「けテぶれ」の本質です。

そもそも、なぜ宿題は「めんどくさい」のでしょうか。 それは、教師も子どもも「これ、意味なくない?」という違和感を心のどこかで感じているからではないでしょうか。その違和感に蓋をして「勉強だから」と押し付けてきた結果が、現在の宿題文化の衰退につながっているのです。

宿題を意味のあるものに変えれば、子どもたちは楽しく取り組み、先生も丸付けが楽しくなります。

「けテぶれ」サイクルで宿題はどう変わるか 「けテぶれ」による宿題では、毎日のプリントは不要です。必要なのはドリルとノートだけです。 先生が過度にお膳立てをするほど、子どもたちは教科書やドリルといった基本的な学習ツールを使いこなす機会を失ってしまいます。「けテぶれ」を始めると、子どもたち自身が「ドリルって、実はすごくよくできている」と気づき始めます。

学習を子どもたち自身に委ねるためには、シンプルなサイクルが必要です。それが以下の4ステップです。

1. 計画(け):その日の目当て(目標)を書く 2. テスト(テ):自分でテストをして丸付けをする 3. 分析(ぶ):間違いを分析し、どうすればできるようになるか考える 4. 練習(れ):分析で考えたことをもとに練習する

このサイクルを回すことで、学習は個別最適化されていきます。30人いれば30通りの目当てがあるのが自然です。全員に同じ課題を課すことの不自然さに気づき、一人ひとりの進捗や理解度に合った学習をスタートさせることが重要です。

教師の役割は、知識を一方的に教えることから、子どもたちの学習を支えるサポーターであり、伴走者へと変わっていきます。

なぜ「学び方を学ぶ」ことが重要なのか 皆さんは、資格取得などのために勉強するとき、どのように学習を進めるでしょうか。 おそらく、問題集を買い、計画を立て、問題を解いて丸付けをし(計画・テスト)、間違えた箇所の解説を読んで(分析)、繰り返し解き直す(練習)はずです。

しかし、私たちはこのような学び方を明確に誰かから教わった記憶はほとんどありません。 だからこそ、勉強は「できる子はできる、できない子はできない」という断絶が生まれ続けてきました。

これは、泳ぎ方を教えずに30人を海に突き落とすようなものです。感覚的に泳げる子もいれば、溺れてしまう子もいます。教師は、この「感覚的に泳げてしまった」側の人間であることが多いのです。 しかし、スイミングスクールに行けばほとんどの子が泳げるようになるように、正しい学び方を教えれば、どの子も勉強ができるようになるという前提に立つべきです。

やらされる勉強の危険性:トップ高校生の事例 以前、日本トップレベルである灘高校の生徒と話す機会がありました。彼は、学校から与えられる膨大な量のインプットについていけず、無気力状態に陥っていました。

  • 自分にとって何が必要な学習か判断できない
  • モチベーションの波を自己管理できない
  • 学びに対してどう向き合うかという姿勢が確立されていない

知識量は豊富でも、学習者としては非常に頼りない状態でした。 このような「お利口さん」のまま社会に出ると、正解のある仕事はこなせても、自分で判断が求められる場面で立ちすくんでしまうケースが少なくありません。これまでの学校教育の仕組みは、そうしたマインドセットを再生産してきた面があります。

今こそ、この構造的なズレに気づき、これからの時代に求められる自立した学習者を育てることに舵を切るべきなのです。

自ら学ぶことで得られる3つの気づき 子どもたちに学習を任せると、大きな気づきが生まれます。

1. 学ぶことは本来楽しい 赤ちゃんが「スプーン」という言葉を覚えるとき、何度も「やってみて、考えて」を繰り返します。これはやらされているのではなく、そのサイクル自体が楽しいからです。 「けテぶれ」は、子どもたちが忘れてしまった学ぶことの原初的な楽しさを思い出させてくれます。

2. 「サボる」ことで自律する 今の教育では「サボること」は絶対悪とされがちです。しかし、サボる経験をさせないと、子どもたちはサボった結果どうなるのか、そこからどう立ち直ればいいのかを学ぶ機会を失います。 うまく休む、うまくサボるスキルは、人生において非常に重要です。また、一度サボっても、そこから再起できるという経験は、挑戦する意欲の源泉にもなります。

3. 「自律」から「自立」へ - 自律(自分で自分を律する):自己コントロールの段階です。 - 自立(自分で立つ):他者との関係性の中で立つ段階です。

自分で自分をコントロールできるようになった先に、できないことは他者を頼り、できることで他者を助けるという「自立」があります。失敗を恐れず挑戦できるのは、助けを求められる仲間がいるからです。

宿題は、自己学習力を育てる絶好のステージ 宿題廃止論も聞かれますが、家で一人で学ぶという経験は、これからの情報社会を生きる子どもたちにとって極めて重要です。家庭学習と学校での学びを連動させることは、もはや必須と言えるでしょう。

  • 目的:自立した学習者になるため
  • 目標:テストで合格点を取ること
  • 手段:学習内容、量、方法はすべて自由

この枠組みの中で、子どもたちは自分なりの学び方を確立し、家と学校での学びを自分なりに使い分けるようになります。

おわりに:まずはやってみよう 本書は絶対の正解ではなく、あくまで私の実践報告です。学び方が多様であるように、先生方の指導法も多様であって当然です。

「けテぶれ」は、私が職員室で「こんなことを思いついたんですけど、やりませんか?」と同僚に話しかけた、ほんの15分の思いつきから始まりました。 難しく考えすぎず、まずはやってみることが大切です。やってみなければ、考えることすらできません。教室で導入してみて、そこから先生自身の「けテぶれ」が始まります。

ぜひ、子どもたちを信じて、学びを任せてみてください。子どもたちはきっと、それに応えてくれるはずです。

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