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生活けテぶれで、子どもが自分の一日を動かし始める

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新年度の学級づくりで大切なのは、初日に語った理念を、毎日の生活の中で子どもが実感できる仕組みにすることです。

「自分の人生のコントローラーは自分が握る」。このメッセージを本当に学級の文化にしていくためには、授業だけでなく、学校生活そのものを自律の練習場に変えていく必要があります。

生活けテぶれは、朝に生活目標を計画し、午前中に実行し、昼に評価・分析し、午後に取り戻しや次の挑戦を行う実践です。漢字や宿題で行うけテぶれとは別に、生活そのものへ「計画・テスト・分析・練習」を持ち込みます。

子どもはそこで、自分の行動、気持ち、心と体を自分でコントロールする難しさを体感します。そして、その経験が授業や自由進度学習で自分の学びを動かす土台になります。

初日に語ったことを、最終日まで言い続けられるか

新年度の初日、教師はさまざまなメッセージを子どもたちに語ります。

「この一年、自分で考えて動けるようになろう」 「自分の人生のコントローラーは、自分で握っているんだよ」 「先生に動かされるのではなく、自分で自分を動かしていこう」

こうした語りは、学級開きにおいてとても大切です。しかし、そこで終わってしまうと、メッセージは弱くなります。

初日に語ったことは、最終日にも語れるように、毎日の生活を貫く構造にしなければなりません。

初日に「あなたがあなたのコントローラーを握る」と語ったにもかかわらず、その後の学校生活が、ただレールの上を進むだけの毎日になってしまう。教師がすべて決め、子どもはそれに従うだけになる。そうなると、最初の語りは、理念としては美しくても、日々の経験とは結びつきません。

だからこそ、毎日「自分で決めて、自分で動き、自分で振り返る」場が必要です。

そこで有効なのが、生活けテぶれです。

学びのコントローラー
学びのコントローラー

生活けテぶれは、「自分のコントローラーを自分で握る」という語りを、毎日の生活で実践できる形にしたものです。授業をいきなり全部任せることに不安がある場合でも、生活の場面なら始めやすい。子どもにとっても、教師にとっても、現実的な入口になります。

生活けテぶれとは何か

けテぶれは、計画、テスト、分析、練習のサイクルです。

漢字練習や家庭学習で、けテぶれを始めることはよくあります。もちろん、それも有効です。ただ、それとは別の方向として、生活そのものにけテぶれを持ち込む方法があります。

それが、生活けテぶれです。

生活けテぶれは、漢字や宿題のけテぶれとは別に、学校生活そのものへ計画・テスト・分析・練習を持ち込む実践です。

学習以前に、子どもは毎日、生活しています。あいさつをする。ごみを拾う。困っている子を助ける。ありがとうを言う。関わったことのない友達に一言話しかける。落ちているものを拾って届ける。

こうした生活の中の行動を、自分で選び、自分で実行し、自分で振り返るのです。

生活目標は、最初から立派で大きなものである必要はありません。むしろ、日々の学校生活の中で実際に試せる小さな行動から始めるほうがよいです。

たとえば、次のような目標です。

  • 目についたごみを一つ拾う
  • 朝、相手の目を見てあいさつする
  • 「ありがとう」を一回、自分から言う
  • 困っている子がいたら声をかける
  • あまり話したことのない友達に一言話す
  • 落ちているものを拾って持ち主に届ける

これらは道徳的、生活的な行動です。道徳の教科書や学校の生活目標、学級で大切にしたい価値項目などを参考にして、選択肢を用意してもよいでしょう。

ただし、「何でもいいよ」だけでは、子どもによって目標の質がばらばらになりすぎます。最初は教師がいくつかの選択肢を示し、「今日はどれに挑戦する?」と投げかけると始めやすくなります。

一日の流れとして生活を回す

生活けテぶれは、一日の流れに組み込みます。

朝、子どもは生活目標を一つ決めます。できる子は複数でもかまいませんが、まずは一つで十分です。

「今日はこれをする」と自分で宣言する。これが計画です。

午前中は、その計画を実行してみます。授業の合間、休み時間、給食前、友達との関わりの中で、自分が決めた行動を試します。

昼、掃除が終わったあたりで、いったん自分の行動を振り返ります。これがテストと分析です。自分の計画は実行できたのか。できたなら、何がよかったのか。できなかったなら、何が難しかったのか。次はどうすればよいのか。

そして、5時間目、6時間目が練習タイムになります。

午前中にできなかった子は、午後に取り戻そうとします。午前中にできた子は、そこを現在地として、さらに一歩進むチャレンジをします。

朝に計画し、午前中に実行し、昼に評価・分析し、午後に練習する。これによって、一日の生活そのものがけテぶれになります。

けテぶれシート
けテぶれシート

形式は、けテぶれシートでも、ノートでもかまいません。大切なのは、計画を書く欄と、分析を書く欄があることです。ノートの一行目にその日の生活目標を書き、昼や帰りに振り返る形でも十分に成立します。

たとえば、三つの生活目標を立てた場合、昼にそれぞれできたかどうか丸をつけます。三つできたら100点、二つできたら66点というようにしてもよいです。一つだけ目標を立て、「今日は80%くらいできた」と自己評価してもよいです。

点数化は目的ではありません。目的は、自分の計画が自分で実行できたかを見つめることです。

生活けテぶれを単なる生活チェック表にしてしまうと、本質からずれます。大切なのは、「先生にチェックされるため」ではなく、「自分が自分を動かすため」に振り返ることです。

分析は丸付けで終わらせない

生活けテぶれでは、できたかどうかを確認するだけで終わらせません。

丸がついた。点数が出た。そこで終わると、ただの生活チェックになります。けテぶれである以上、分析が必要です。

分析では、3+3観点を使います。プラス、マイナス、矢印。そして、びっくり、はてな、星。こうした観点を使いながら、自分の行動を言葉にしていきます。

たとえば、あいさつを目標にした子が、昼に振り返るとします。

「朝はできた」 「でも、休み時間は友達に声をかけられなかった」 「相手が先に話してくれるのを待っていた」 「午後は、自分から一人に言ってみる」

このように、成功、失敗、次の一歩を言葉にします。

分析とは、結果を見て終わることではなく、自分の現在地をつかみ、次の練習を決めることです。

3+3観点の振り返り
3+3観点の振り返り

特に大切なのは、矢印です。次にどうするか。午後、何を試すか。生活けテぶれでは、昼の分析がそのまま午後の練習につながります。

できなかった場合は、午後に取り戻します。できた場合は、同じことをもう一度するだけでなく、少し質を上げます。

あいさつができたなら、午後は相手の名前を呼んであいさつする。ごみを拾えたなら、午後は拾ったあとに周りも少し見てみる。困っている子に声をかけられたなら、午後は最後まで一緒に考えてみる。

こうして、生活の中に小さな練習が生まれます。

計画の質を育てる

生活けテぶれを始めると、最初は「忘れた」ということが頻繁に起こります。

朝に「今日はこれをする」と決めたのに、休み時間になったらすっかり忘れている。目の前の刺激や友達とのやりとりに反応しているうちに、自分の計画が頭から抜けてしまう。

これは失敗ではありません。むしろ、ここに重要な学びがあります。

自分で自分を意識的にコントロールすることは、思っている以上に難しいのです。

子どもたちは、朝に決めたことを、午前中の生活の中で保ち続ける難しさを体感します。だからこそ、生活けテぶれは自律の練習になります。

そして、ある程度できるようになってきたら、次に育てたいのは計画の質です。

最初は「できた」「100点」が続いてもよいです。しかし、ずっと簡単に100点が取れる計画ばかりでは、成長は止まります。

生活目標は、簡単すぎる達成リストから、少し失敗の可能性を含む挑戦的な計画へ育てていく必要があります。

目安としては、成功と失敗が7対3くらいです。

絶対にできることだけではなく、少し難しい。けれど、がんばれば届く。そういう計画を立てられるようになることが大切です。

たとえば、あいさつがすでに得意な子が、毎日「一回あいさつする」と書いて100点を取り続けるだけでは、そこからの伸びは小さくなります。その子なら、「相手より先にあいさつする」「相手の名前を呼んであいさつする」「あまり話したことのない人にあいさつする」といった質の高め方が考えられます。

反対に、友達に声をかけることが苦手な子なら、「一人に小さな声で言ってみる」でも十分な挑戦になります。

現在地は子どもによって違います。だからこそ、同じ目標でも、挑戦の質は一人ひとり異なります。

生活がチャレンジの場に変わる

生活けテぶれが回り始めると、学校生活の見え方が変わります。

休み時間、給食、掃除、移動、友達との会話。これまでは何となく過ぎていた時間が、「自分で自分を動かす場」になります。

生活も、子どもがチャレンジする場に変わるのです。

ここで育つのは、単なる生活態度ではありません。自分の行動、気持ち、心と体を、自分でコントロールしようとする感覚です。

「朝、決めた」 「でも忘れた」 「昼に気づいた」 「午後にもう一回やってみた」 「昨日より少しできた」

この積み重ねが、自律の土台になります。

生活けテぶれの本質は、よい行動を増やすことだけではありません。もちろん、あいさつが増えたり、困った子を助ける姿が増えたりすることは大切です。しかし、さらに中心にあるのは、子どもが「自分を動かす難しさ」と「自分を動かせた手応え」を経験することです。

「あなたがあなたの行動をコントロールできたね」 「朝に決めたことを、自分で思い出して動けたね」 「できなかったけれど、昼に気づいて午後に取り戻そうとしたね」

こうしたフィードバックが、子どもの自己効力感や主体性につながっていきます。

教師は放任しない

生活けテぶれは、子どもに任せる実践です。しかし、放任ではありません。

教師は、子どもが自分で動けるように環境を整えます。選択肢を示します。シートやノートを用意します。振り返る時間を確保します。失敗しても大丈夫な練習の場として、学級を整えます。

そして、提出されたシートやノートに星を入れます。

けテぶれノートや漢字ノートと同じように、生活けテぶれの記録にも星を入れる。放課後に30人分を見て、よい挑戦やよい分析に印をつける。次の日の朝に返す。顕著なよい例は紹介する。余力があれば、けテぶれ通信に載せる。

こうした教師のフィードバックが、生活上の成長を価値づけます。

「この子は、午前中にできなかったことを午後に取り戻そうとしている」 「この子は、失敗した理由を自分の言葉で書けている」 「この子は、自分の得意をさらに伸ばそうとしている」

教師がそこを見取り、星を入れ、紹介することで、学級の中に「生活の成長も価値がある」という文化ができます。

点数や星は、点数稼ぎのためにあるのではありません。子どもが自分の現在地に気づき、次の一歩へ進むためのフィードバックとして機能させます。

授業で任せる前に、生活で自分を動かす

低学年や中学年にとって、いきなり授業の中で自由進度的にけテぶれを回すことは難しい場合があります。

学習内容を理解する。時間を見通す。自分の進度を判断する。必要な練習を選ぶ。これらを授業の中で一度に行うには、かなり高い自己調整力が必要です。

だからこそ、生活けテぶれから入る意味があります。

生活の中で、まず「自分で計画する」「自分で実行する」「自分で振り返る」「自分で練習する」という経験を積む。その上で、授業に落とし込んでいくのです。

たとえば、35分の国語の授業で、「今日の自分のめあてを決める」「途中で振り返る」「最後に次の練習を決める」といった学習けテぶれへつなげていきます。

生活でやっていることを、授業という焦点化された時間に移していく。これが、無理のない導入になります。

生活で自分を動かす経験が、授業で自分の学びを動かす導入になります。

自由進度学習や授業内の自己調整に向かう前に、生活の中でコントローラーを握る経験を積む。これは、特に新年度の学級づくりにおいて有効です。

学校は練習の場である

自分をコントロールすることは、簡単ではありません。

朝に計画を立てても忘れる。うまく声をかけられない。思ったより勇気が出ない。やろうと思っていたのに、別のことに流される。

しかし、それでよいのです。

学校は練習の場です。失敗しても、教師がいます。学級があります。人生を大きく損なうような失敗にならないように、教師が環境を整えています。

だから、子どもたちはそこで試すことができます。少し失敗する。難しさを感じる。もう一度やってみる。自分の動かし方を学ぶ。

計画を立てずに走り出すのは、道をつくらずに車を走らせるようなものです。どこへ向かうのか分からず、うまく進めません。けれど、道をつくっただけでも十分ではありません。運転する技術も必要です。

自分を動かすには、計画も必要です。練習も必要です。自分がどんなときに動きやすいのか、どんなときにやる気が出るのか、どこでつまずくのかを知ることも必要です。

生活けテぶれは、その技術を毎日の生活の中で育てる実践です。

生活けテぶれから始める新年度

新年度にけテぶれを始めるとき、漢字や宿題から入る方法は有効です。

しかし、それだけでなく、生活けテぶれを同時に考えてみる価値があります。

初日に語った「自分のコントローラーは自分が握る」というメッセージを、毎日実践できる形にする。朝の計画、昼の評価・分析、午後の練習で、一日の生活を回す。簡単すぎる目標から、少し失敗の可能性を含む挑戦的な目標へ育てる。教師は星入れや事例紹介を通して、生活上の成長を見取り、価値づける。

生活けテぶれは、単なる生活チェックではありません。

子どもが、自分の行動、気持ち、心と体を、自分で動かそうとする実践です。そして、その経験は、授業で自分の学びを動かすための確かな土台になります。

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