心マトリクスの土台であるワクワク(地球)ゾーンは、自己肯定感や安心感を育むための最も重要な領域です。
教育現場では、子どもたちが自分自身を肯定できるよう、「違いは価値である」と具体的な言葉で伝えることが不可欠となります。
最終的にはマトリクス全体を「自分」として捉え、ありのままの自分を受け入れていくことが、真の成長につながります。
はじめに:心マトリクス講義の現在地 心マトリクスの連続講義も、いよいよ核心に迫ってきました。今回は、8つのゾーンの最後、9つ目のゾーンとして存在する地球ゾーンについて解説します。
この地球ゾーンは、心マトリクスのすべての活動の土台となる、非常に重要な場所です。ここが安定して初めて、他のゾーンへと健全に歩みを進めることができます。
心マトリクスの土台「地球ゾーン」とは? 心マトリクスにおける地球ゾーンは、自分が自分であるという安心基地そのものです。一般的に言われる以下の概念が、このゾーンに集約されています。
- 自尊感情
- 自己肯定感
- 自信
自分という存在がグラグラな状態では、どこかへ進もうにも進めません。まずは自分自身の足元を固めること。それが地球ゾーンの役割です。
教育現場における地球ゾーンの重要性 特に義務教育の現場では、この地球ゾーンの考え方が極めて重要になります。公立の学校には、家庭環境や生育歴において、大変しんどい思いをしている子どもたちもいます。
そのような子どもたちに対して、いきなり「考えて動きましょう」とか「誰かを信じて思いやりましょう」と伝えても、響きません。なぜなら、自分自身がまだグラグラな状態だからです。その状態で、自分以外の何かに意識を向けることは非常に困難なのです。
だからこそ、教育現場ではあなたという存在を、まずはあなた自身がいいんだと安心できることを最優先にすべきだと考えています。
私が教室の黒板の右側に、以下の3つの言葉を書き続けていたのは、まさにこの地球ゾーンを育むためでした。
1. あなたは"あなた"であるとき最も輝く 2. 長所で頼られ、短所で愛される 3. 違い=価値
「違いイコール価値」を言葉で伝える力 「違いは価値である」というメッセージを繰り返し伝えることには、大きな意味があります。子どもたちは、周りのみんなと違う状態であることに、少なからず不安を感じるものです。画一的な環境になりがちな教室という空間では、異質な言動は目立ちやすく、それが疎外感や自己否定につながってしまう危険性があります。
だからこそ、「その違いは悪いことではないんだよ」ということを、具体的な言葉として切り取って伝えることが非常に大切になります。
「価値語」と心マトリクスの親和性 このようなアプローチは、菊池省三先生が提唱されている「価値語」の実践とも深く関連します。素晴らしい言葉で、子どもたちの行動や成長を切り取り、価値づけていく手法です。
心マトリクスと価値語は非常に親和性が高く、実際に教室の子どもたちが、心マトリクスの各ゾーンに価値語を当てはめながら解釈していく、という素晴らしい実践が生まれたこともあります。
心マトリクスの強み:構造的な理解 では、心マトリクスと価値語を組み合わせることで、どのような相乗効果が生まれるのでしょうか。
心マトリクスの最大の強みは、価値を構造的に理解できる点にあります。
例えば、1年間で100個の価値語を学んだとします。それは素晴らしいことですが、その100個の言葉がどのような構造になっているのかまでは分かりません。
しかし、心マトリクスを使えば、 「自分は月ゾーンの価値語はたくさん見つけられたけれど、太陽ゾーンの価値語は少ないな」 「ブラックホールゾーンに当てはまる価値語は何だろう?」 といったように、自分の価値観の構造や偏りを可視化できます。
構造がわかるということは、抜けや偏りがわかるということです。これにより、自分や他者がどのような価値を大切にしているのかを、より深く、客観的に理解できるようになります。
子どもたちが「使える言葉」へのチューニング 言葉でメッセージを伝える際には、それが子どもたち自身にとって「使える言葉」になっているかどうかが重要です。
私は当初、「あなたはあなたであるとき最も輝く」という言葉を黒板に書いていました。しかし、これは子どもたちが振り返りなどで使おうとすると、「あなた」という言葉が他人事になってしまい、少し使いにくいことに気づきました。
そこで、年度の途中でこの言葉を次のように変更しました。
「自分は自分であるとき最も輝く」
こうすることで、子どもたちはこの言葉をそのまま自分の言葉として使うことができます。「自分は自分であるとき最も輝けた」と、主体的に自分の成長を語れるようになるのです。このように、子どもたちの反応を見ながら言葉をチューニングしていくことも大切です。
心マトリクスの構造と自分の捉え方 心マトリクスは、中心の地球ゾーンを囲むように2つの円が描かれています。この構造にも意味があります。
- 内側の円: 「考える」「疑う」「信じる」など、自分の内的な状況を示しています。
- 外側の円: 「動く」「思いやる」「自分ばっかり」など、内的な思いが外に表出している状態を示しています。
最初は中心にある地球ゾーンだけが「自分」だと考えがちです。しかし、1年間を通して心マトリクスと向き合うと、その捉え方は変わってきます。
内側で考えたり疑ったりする自分も、外側で動いたり、時にはイライラしたり、もやもやしたりする自分も、その全てが自分なのだということに気づいていきます。
人生とは、マトリクス上のあらゆる場所に存在する自分を、まずは自分が真っ先に認め、うまく付き合っていくことなのではないでしょうか。この学びこそが、心マトリクスを通して子どもたちに届けたい最終的なメッセージです。