自由進度学習の根幹には「自分の人生は自分によるもの」という主体性の考え方があります。
教師は子どもを信じ、任せ、認め、子どもが自身の学びの主人公であることを実感できる環境を作ることが重要です。
学力の成果だけでなく、学びの過程で本当の自分と向き合い、それを受け入れる経験そのものに大きな価値があります。
はじめに:自由進度学習の連続講義を始めます 今月から「くずはら流自由進度学習の始め方」というテーマで、1ヶ月間の連続講義を行っていきます。 講義と質問への回答を繰り返しながら進めていく予定です。
この講義は、一方的に情報をお伝えするだけでなく、皆さんからの質問にも積極的にお答えしていきたいと考えています。 「これについて話してほしい」「ここの情報がもっと知りたい」といったご要望がありましたら、ぜひコメントでお知らせください。
それでは早速、第1回目の講義を始めましょう。
自由進度学習の「前提の前提」 自由進度学習について語る上で、まず押さえておきたい大前提があります。 それは、自由という言葉の捉え方です。
「自由」とは「自分による」ということ 「自由」という漢字を分解すると「自分による」と書きます。 つまり、自由進度学習の根底にあるのは、「あなたの人生は、あなた自身によるものだ」というメッセージです。
このメッセージが子どもたちにしっかりと伝わっているかどうかが、自由進度学習を成功させる上で最も大切なことだと考えています。 もし、自分の人生や時間の充実度が「他人によるもの」だと考えていたら、学習も人生も、他人任せの依存的な姿になってしまうでしょう。
私の研究所では「全ての子供たちを人生の主人公に」というキャッチコピーを掲げています。 これは、教室という場においても、そして人生という大きな舞台においても、主人公は他の誰でもない「あなた自身」なのだという、紛れもない事実を伝えるための言葉です。
子どもたちが「自分の学びの主人公は自分なんだ」と理解し、自分で決めて、実行し、振り返るというサイクルを回していくこと。 それこそが「生きる」ということに直結する営みであり、学校で学ぶ非常に大切な目的なのです。
教師に求められるあり方 子どもたちを学びの主人公にするためには、指導者である教師のあり方が極めて重要になります。 やり方のテクニック以前に、指導者がどのようなマインドで子どもたちと向き合うかが、学習環境の質を決定づけます。
「やっていいですか?」に0秒で「いいよ」と答える覚悟 子どもたちはよく「先生、〇〇していいですか?」と聞いてきます。 この問いに対して、いかに食い気味に、0秒で「いいよ」と言えるか。ここに、教師のスタンスが現れます。
そこで一瞬でも「え?」と考えてしまうのは、「やっていいかどうか」の判断基準が教師側にあると考えているからです。 しかし、本来は子ども自身が「やりたい」と思っているのなら、その意思はすべて尊重されるべきです。
もちろん、やりたい放題にさせるという意味ではありません。「いいよ」と即答した上で、「どういう風にやるの?」「どんなつもりでやるの?」とその先を尋ね、子ども自身の考えを深める手伝いをすれば良いのです。
大切なのは、基本的なスタンスとして、 「あなたの発想、願望、意欲は、すべてこの教室で実現していいんだよ」 というメッセージを伝え続けることです。
以前の放送でもお伝えした「信じて、任せて、認める」という姿勢がここで活きてきます。 逆に「疑い、管理し、否定する」という姿勢が強くなると、「自由だよ」という言葉と行動の間に矛盾が生じ、子どもからの信頼を失ってしまいます。 「自由って言ってるけど、結局縛ってくるじゃないか」と思われた瞬間に、歯車は狂い始めてしまうのです。
自由進度学習と「学力」をどう考えるか 自由進度学習のような、子どもに任せる学び方を提案すると、必ず出てくるのが学力、特にテストの点数についての懸念です。 「このやり方では、点数が伸びない子も出てくるのではないか?」という質問を研修会で受けたことがあります。
これについては、2つの側面から考えてみたいと思います。
1. 最大限努力できる環境が結果につながる まず、結論から言うと、子どもに任せる学び方をした方が、点数が上がる可能性は高まります。
一斉授業では、一度つまずくと、授業が進む中でなすすべなく時間だけが過ぎていく、という状況に陥りがちです。 しかし、自由進度学習であれば、その時間すべてを使って、自分の現在地から一歩進むための努力ができます。 「先生が教えてくれないからできない」「みんなについていけないからできない」という言い訳が通用しない代わりに、自分の学習に最大限コミットできる環境が手に入るのです。
「自分はこれだけ精一杯やったんだ」という努力の背景があるかどうかは、テストの結果を受け止められるかどうかに大きく影響します。 そして、自分のマインドと持てる時間を最大限に使って努力すれば、結果として点数は上がってくることがほとんどです。
2. 「できなかった」という事実を受け入れる強さ とはいえ、最大限努力しても、結果が伴わないケースもあり得ます。 その時にどう考えるか。
私は「それなら、しょうがないじゃないか」と思うのです。
壊滅的に算数が苦手なら、算数を使わない職業や人生を選択するという戦略を立てればいい。 それは、自分を知り、自分の人生を設計していくキャリア教育そのものです。
「自分にはこれができない」という事実を、努力した上で認識すること。 それもまた、自分を知るための非常に価値のある学びです。 もちろん、今の単元ではできなかっただけで、次の単元ならできるかもしれないし、来年になれば突然できるようになるかもしれません。 だからこそ、挑戦し続けるためのマインドと努力の方法は伝え続けます。
しかし、あらゆる努力をした上での結果であれば、それを受け入れ、次の一手を考える。 その経験を繰り返す中で、子どもたちは結果に一喜一憂するのではなく、努力の過程そのものに価値を見出すようになります。
丸くなるな、星になれ これからの時代は、何もかもそつなくこなせる「丸い人」よりも、凸凹はあってもどこか鋭く尖った部分を持つ「星のような人」が輝く時代です。
苦手なことを無理に克服しようとするのではなく、それも自分らしさの一部として受け入れる。 そして、自分の尖った部分(長所)を磨き、輝かせていく。 自由進度学習は、子どもたちが自分だけの「星の形」を見つけるための学びでもあるのです。
まとめ:自由の中で、本当の自分に出会う 今回は、自由進度学習の根底にある哲学的な部分についてお話ししました。
自由進度学習とは、単なる学習方法のテクニックではありません。 子どもたちが学びの主体者として立ち、自由の中で本当の自分に出会うための環境そのものです。 その中で見つけた自分の得意なことも苦手なことも、すべて含めて「これが自分だ」と受け止められるようになること。 そこに、この学習スタイルの本質的な価値があると考えています。
次回は、今回いただいたコメントにお答えしつつ、その次からは準備物など、より具体的なテクニックの話もしていく予定です。 ご質問やご意見がありましたら、ぜひコメントをお寄せください。