心マトリクスの星(キラキラ)に至る道は、一つではありません。太陽から入って月へ向かう道と、月から入って太陽へ向かう道、少なくとも2ルートがあります。娘が給食をこぼした友達を助けた出来事を手がかりに、それぞれのルートが具体的にどう動くかを読み解きます。月タイプ・太陽タイプという傾向の話にも触れながら、うまくいかない時には入口が合っていないだけかもしれないという見取りの視点をお伝えします。
幼稚園に広がる「生活けテぶれ」
子どもが通う幼稚園の管理職の先生が、図書館でけテぶれの本を見つけて読み込み、園内での実践を始めてくださいました。内容は、見通しを立てて活動してみて振り返り、次の見通しへとつなげる——いわば生活けテぶれ的な活動です。子どもが家に帰ってきて「今日けテぶれやったよ」と話してくれたそうで、日常の学習サイクルが小学校よりさらに早い段階から動き始めていることを感じます。
その振り返りの場として、終わりの会に「今日のキラキラさん」という活動が取り入れられていました。友達のよいところを見つけて発表し合い、誰かを「キラキラさん」として選ぶ、相互承認の場です。低学年でよく行われる形ですが、それが幼稚園の生活の中に根づきつつあるというのは、なかなか興味深い動きです。
友達を助けた行動を心マトリクスで読む
その日、娘がキラキラさんに選ばれました。理由を聞くと、「給食を友達がこぼしてしまった時に、優しく拭いてあげた」ということでした。
「よかったね」で終わることもできますが、うちではすでに心マトリクスを導入しているので、こんな問いかけをしました。「心マトリクスで言ったら、それはどこ?」と聞くと、「キラキラのとこ」と答えてくれました。そうだよね、星のエリアを通ったんだよ。そこからもう一歩踏み込んで、「実は、キラキラに行くには2つのルートがあるんだよ」という話をしました。

その2つのルートとは、月から行くのか、太陽から行くのか、ということです。娘の行動がどちらのルートだったかを一緒に考えてみました。
太陽から月へ:信じることが動きを生む
娘の行動を分解してみます。友達が給食をこぼした瞬間、娘はどう動いたか。
まず、「あの子は悪意でこぼしたわけじゃない」という確信があったはずです。これは無意識のレベルかもしれませんが、悪い気持ちでこぼしてないよね、という確定した信じ方が瞬時に立ち上がっています。次に、「今その子はきっとつらい気持ちだろう、一人では片付けるのも大変だろう」という思いやりが出てきます。この「信じて、思いやる」という動きが、太陽の動きです。
太陽に入ってからはじめて、「今この子に何が必要か」を考えて動く——拭いてあげよう、声をかけよう、という行動が生まれます。これが月の動きです。つまり、太陽から月へ向かって、星のエリアを通ったということです。
時計の針で説明すると、太陽は3時の方向にあります。まず3時の方向に針を向けて、そこから反時計回りに考えて動くパワーを高めていく。その動きの中で星のエリアを通り、キラキラが立ち現れる。この流れが、太陽→月ルートです。
月から太陽へ:力を高めてから向ける
では逆のルートはどういうものでしょうか。月から太陽へ向かって星に至る道です。
一つの例として、音楽会の練習があります。めちゃくちゃ頑張って練習して、自分がうまくなった。その段階ではまだ「誰かのために」という気持ちはそれほど前に出ていないかもしれません。個人の努力として、自分の力を高めることに集中している——これが月の動きです。
その力が高まった時に、「これを誰かに教えてあげよう」「一緒にやろう」という気持ちが出てきます。培った力を誰かのために向けていく、信じて思いやるという太陽の動きが後からついてきます。その時に星のエリアをまた通るわけです。
つまり、太陽から月へ向かうルートも、月から太陽へ向かうルートも、どちらも星に至る正当な道です。どちらが上とか、どちらが善いかという話ではなく、人によって、あるいは場面によって、入りやすい側が違うということです。
月タイプ・太陽タイプという傾向
この2ルートをもう少し引き伸ばすと、人によって「入りやすい側」がある程度傾いていることがわかります。
月タイプの人は、まず個人の努力として自分の力を高め、けテぶれを回して結果を出すことにコミットしようとします。結果が出たタイミングで、それを人に伝えたり貢献したりすることで太陽のパワーを発揮したいと感じています。まだ実力が高まっていない段階で、根回しや誰かのご機嫌取り、求められることへの引っ張られといった動きを求められると、逆方向に引っ張られてもやもややイライラになりやすい傾向があります。
太陽タイプの人は、まず誰かとのつながりをつくり、組織の中で信頼を得て、チームで連携したり誰かの仕事を肩代わりしたりするところから力が出ます。信頼関係があって、誰かに求められていて、応援がある状態で動くと本領が発揮できます。そういった環境がないまま「まず自分一人で結果を出しなさい」と言われると、ダラダラしたりフワフワしたりして逃げていくことになりがちです。
どちらが優れているという話ではなく、入り方の傾向です。また、タイプとして固定されているわけでもなく、気分やフェーズによって違うこともあります。今日は月から入りやすい状態にある、今のこの場では太陽から入っていける、という揺れは十分あり得ます。
組織の中での摩擦と、その見方
一点、月タイプの振る舞いが組織の中で摩擦を生むことがある、という話にも触れておきます。「あいつ一人で勝手なことしてる」という目で見られることもあり得ます。これは組織の健全性の問題でもありますが、月タイプの側も调节していく必要はあるでしょう。
ただ、それはタイプの問題であって、本人の欠点という話とは少し違います。月タイプの行動が攻撃対象になりやすい環境があること自体を、まず見ておく必要があります。責めるよりも、どちらのタイプの動きをその人は自然にできるのかを見取ることが、本人にとっても周囲にとっても出発点になります。
うまくいかない時は「入口」を疑ってみる
自分がなんかうまくいってないな、と感じる時、それは能力が足りないからではないかもしれません。今の自分に合わない入口から、星を目指そうとしているだけかもしれない。
月から入りたい状態の時に太陽のことを求められている、あるいは太陽から入りたい状態の時に一人で結果を出すことだけを求められている。そのズレが、動けない感覚やもやもやを生んでいることがあります。
どっちから行く方が自分は向いてんのかな、今自分はどっちのフェーズにいるのかな——そういう視点で自分の現在地を見ていくことが、心マトリクスの使い方の一つです。子どもを見取る場面でも、今この子はどっちから入りやすい状態にあるのかを観察することで、声のかけ方やかかわり方が変わってくるはずです。
月からでも、太陽からでも、星には必ず至れる。どちらの道も、人が輝く正当なルートです。