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算数授業にけテぶれをどう手渡すか

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兵庫県川西市のある学校では、けテぶれ全校実践2年目として、算数にけテぶれを導入し、授業改善へ進もうとしています。今回の実践で印象的だったのは、けテぶれを一気に全面導入するのではなく、授業者自身の現在地から、子どもたちへ少しずつ学びを手渡していく設計になっていたことです。

授業は、最初の10分で一斉授業として本時の要点を押さえ、その後、計画・テスト・分析・練習へ移る流れで進みました。全員で同じ内容を学ぶ時間を土台にしながら、子ども一人ひとりが自分の現在地から計画を立て、分析と練習を通して学びを分岐させていく。その後、分析交流・練習交流によって、ばらけた学びをもう一度教室全体の学習内容へ戻していく。ここに、算数授業にけテぶれを手渡す大切なヒントがあります。

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全校実践2年目の学校で見えた、けテぶれ導入の現実的な形

今回の舞台は、けテぶれ全校実践2年目の学校です。前年度に学校全体でけテぶれの実践を進め、今年度はさらに算数にけテぶれを導入し、授業改善に取り組もうとしていました。

授業をされたのは、育休明けで、昨年度の全校実践には直接関わっていなかった先生です。つまり、その先生にとっては、けテぶれ初挑戦に近い状況でした。しかも、算数専科として5・6年生の算数を担当し、最初の授業公開を行うという場面です。

ここに大きな価値があります。すでにけテぶれを深く実践している人が、完成された形を見せた授業ではありません。新しくけテぶれに出会った先生が、同じ学校の先生たちから話を聞き、自分の教育観とすり合わせながら、「自分ならこうやってみる」と提案した授業でした。

けテぶれは、最初から全部を渡さなければならないものではありません。実践者の現在地から一歩ずつ子どもに手渡していくことにも、大きな意味があります。

これは、けテぶれをこれから算数授業に導入したい先生にとって、とても現実的な示唆です。全面導入だけが正解なのではなく、自分の授業観、子どもたちの状態、学校の歩みに合わせながら、少しずつ学びの主導権を子どもへ移していく。そのデザインこそ、今回の授業から学べる中心です。

10分の一斉授業を土台に、けテぶれタイムへ移る

授業の流れは、まず「学びの種」のような形で、子どもが作った問題を紹介するところから始まりました。その後、本時の内容に入ります。

この日の算数は、分数×分数×分数の計算でした。最初の10分は、オーソドックスな一斉授業です。四角の問題を全体で扱い、分数を一つのまとまりとして捉え、一括で約分しながら計算すると効率がよい、という本時の要点を押さえていきます。

ここで大切なのは、一斉授業を単純に否定していないことです。10分の一斉授業は、子どもたちがその後に自分で計画を立て、テストし、分析し、練習するための共通の土台になっていました。

けテぶれ図
けテぶれ図

その後、授業はけテぶれタイムへ移ります。子どもたちは、10分間で押さえた内容をもとに計画を立てます。「今日は約分がキーワードになる」といった見通しも提示されますが、計画そのものは、子ども一人ひとりが自分の現在地から立てていきます。

「今日は自分はこういうふうに勉強してみよう」と考える。この時点で、学びは少しずつ子ども自身のものになっていきます。

計画・テスト・分析・練習が、個別最適な学びの入口になる

けテぶれタイムでは、まず計画を立てます。その後、テストとして教科書の三角の問題に取り組みます。四角の問題を全体で押さえ、三角の問題をけテぶれタイムで解消していく、という構造です。

子どもは問題を解き、自分で丸つけをします。そして、できた・できなかったで終わらせず、分析へ進みます。ここで「なぜそうなったのか」「どこが大事だったのか」「次に何をすればよいのか」を考えます。

分析を書いたら、先生のチェックを受けます。ここでの先生の関わりは、子どもの学びを止めるためではなく、最低限の明示とフィードバックを与えるためのものです。分析が十分であれば、子どもは練習へ進みます。

この分析のチェックとフィードバックが、個別最適な学びの入口になります。

全員が同じ授業を受け、同じように計画し、同じテストに取り組むところまでは、比較的そろっています。しかし、分析に入った瞬間に、子どもたちの学びは分かれ始めます。ある子は約分の見通しに気づく必要があり、ある子は計算手順の整理が必要で、ある子はさらに別の表し方へ進めるかもしれません。

そこから練習に入ると、学びはさらに分岐します。追加の練習問題に取り組む子もいれば、学んだ内容を図で表そうとする子もいます。つまり、分析から複線型の授業が現れ、練習によってさらにそれぞれの学習内容が広がっていくのです。

ばらけた学びを、分析交流・練習交流で教室全体へ戻す

個別最適な学びというと、子どもたちが完全に別々のことをしている状態を想像しがちです。しかし、今回の授業の重要な点は、ばらけた学びをそのまま終わらせていないことです。

15分間のけテぶれタイムの後、子どもたちは席に戻り、分析の交流と練習の交流を行いました。

「みんなは分析で何を書いたのか」 「今日の学習内容として、どんなことが大切だったのか」 「練習の中で、どんな気づきがあったのか」

このように、個々に分かれた学びを、もう一度教室全体の学習内容として共有していきます。

ここが非常に大事です。けテぶれによって学びが分岐することは、子どもたちの現在地に応じた学びを生みます。しかし、授業である以上、その学びを教室全体の知として再構成する時間も必要です。分析交流・練習交流は、そのための時間として位置づいていました。

練習のイメージ
練習のイメージ

練習は、ただ量をこなす時間ではありません。分析で見えた課題や気づきをもとに、次の一手を選ぶ時間です。そして、その練習を交流することで、「自分はこう考えた」「自分はここを直した」「このやり方が大事だと思った」という学びが、もう一度全体に返ってきます。

最後には振り返りを行い、自分で書いた分析に加えて、交流によって深まった学習内容を今日のまとめとして記述します。単線型の授業で共通の土台をつくり、けテぶれによって複線型の授業へ開き、最後に全体で再共有する。この往復が、授業としての強さを生んでいました。

問題作りは、楽しい活動で終わらせない

授業の冒頭にあった「学びの種」としての問題作りも、重要な実践でした。子どもが自分で問題を作り、それを紹介する。これは、習得→活用→探究の流れで言えば、「作る」という段階に近づく活動です。

ただし、問題作りは、楽しい活動としてだけ扱うと弱くなります。そこで有効なのが、みんプリの発想です。

問題を作るなら、表面には問題、裏面には回答解説を付ける。これを求めるだけで、活動の質が大きく変わります。

問題を作るだけなら、数字を入れ替えるだけでも成立してしまうことがあります。しかし、回答解説まで書くとなると、その問題がなぜそう解けるのか、どのように考えればよいのかを説明しなければなりません。つまり、作ることと説明することを同時に求めることになります。

これは、子どもにとって認知負荷のあるチャレンジです。しかし、その負荷があるからこそ、習得した知識を活用し、さらに探究へ向かう足場になります。

教室の風景を問題にする

問題作りをさらに算数の学びとして深めるためには、もう一つ大切な視点があります。それは、問題を子どもの生活や教室の風景に接続することです。

たとえば、単に「リボンを3分の4m買いました」という問題を作ることもできます。それ自体が悪いわけではありません。しかし、そこで一歩踏み込んで、「この教室から見える世界を問題にしてみよう」と投げかけると、子どもの見方が変わります。

「けテぶれノートを3分の2だけ進めました」 「教室にあるものを分数で表すとどうなるか」 「今学んでいる計算で、身の回りのどんな場面を説明できるか」

このように、教室の風景を算数の目で見ることが始まります。

ここで働いているのが、学び方の見方・考え方です。算数で学んだことを、算数の問題を解くためだけの知識に閉じ込めない。数量や図形に着目し、現実世界を数的に切り抜き、表現し、考察するための道具として使っていく。

そのように考えると、問題作りは単なる活動ではなくなります。子どもが自分の生活を算数の概念で見直し、現実を解釈するための入口になります。これは、生きる力にもつながる学びです。

けテぶれを、現在地から一歩ずつ手渡す

今回の実践から見えるのは、けテぶれを算数授業に導入する際の、非常に現実的な道筋です。

まず、10分の一斉授業で本時の要点を押さえる。そこから、子どもたちがそれぞれの現在地から計画を立てる。テストによって自分の状態を確かめ、分析で学びを言葉にし、先生のフィードバックを受けながら練習へ進む。分析と練習によって学びは分岐し、複線型の授業が現れる。そして後半には、分析交流・練習交流を通して、ばらけた学びを教室全体の学習内容として再共有する。

この流れは、けテぶれを全面的に導入しきった完成形というより、子どもたちに学びを少しずつ手渡していく設計です。だからこそ、多くの先生にとって試しやすい形でもあります。

一斉授業を捨てる必要はありません。むしろ、共通の土台として活かすことができます。ただし、その後の時間を、子どもが自分の現在地から学びを動かしていく時間に変えていく。そこに、算数授業をアップデートする可能性があります。

けテぶれは、教師の授業を否定するものではなく、教師が押さえた学習内容を、子ども自身の学びへ手渡していくためのデザインです。

育休明けでけテぶれ初挑戦の先生が、自分の教育観に融合させながら提案した今回の授業は、そのことを具体的に示していました。完成された型をなぞるのではなく、現在地から始める。子どもに任せる部分を少しずつ増やし、フィードバックを通して支え、最後には教室全体で学びを確かめる。

算数授業にけテぶれを導入したい先生にとって、まず試す価値があるのは、この一歩ずつ手渡す設計です。

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