コンテンツへスキップ
サポーターになる

ICT活用の本質は「再編集可能性」にある――QNKSとけテぶれで単元全体をつなぐ

Share

ICTの利点として「ノートを瞬時に共有できる」という説明はよく耳にします。しかし、それは活用の出発点にはなっても、本丸ではありません。学習の本質が概念習得にある以上、ICTが最も力を発揮するのは、子どもが単元をとおして概念構造を何度でも書き直し・並べ替え・統合できる「再編集可能性」にあります。単元の導入でQNKSを用いて全体の骨格をつかみ、中間のけテぶれで見つけた重要ポイントを随時追加し、単元末に再編集された構造を自分の言葉で総括する――この「QNKSでサンドイッチする」実践は、全教科に展開できる学習パッケージです。

🎧 この記事を聴く

ICT活用の「本丸」はどこか

ICTを教室に取り入れる理由として、よく挙げられるのが情報共有のしやすさです。タブレット上にクラス全員のノートが映し出され、互いに参照しながら授業を進められる、というイメージです。情報共有そのものを否定する必要はありません。ただ、それだけを根拠にICTを使い続けようとすると、どこか「本当にそれが目的なのか」という違和感が残ります。本質的にICTでなければ難しいことは何か、という問いを立てると、答えが変わってきます。

ノートや鉛筆で概念構造図を書いたあと、コツやポイントが増えてきたとき、要素の位置を入れ替えたい、二つをひとつに統合したいと思っても、鉛筆ではそれが大変な作業になります。一行直したいだけで全体を書き直すことになりかねない。ICTのホワイトボードなら、付箋を動かし、線を引き直し、要素を統合することが何度でもできます。この書き直し・並べ替え・統合のしやすさ、すなわち「再編集可能性」こそが、ICTが単元学習に持ち込める本質的な強みです。

学習の本質は概念習得にある

ICTをどこに置くかを考える前に、学習そのものの構造を押さえておく必要があります。

ICTも、ノートも、鉛筆も、すべて学びのコントローラーです。では「勉強」とは何をすることかといえば、概念を習得することです。数の概念、言葉の概念、物質の変化の概念――「これはこういうことなんだ」という認識の枠組みを広げ、精緻にしていくことが、学習として目指すべき核心にあります。

学びのコントローラー
学びのコントローラー

概念はどのように構築されるか。それは、構成要素を確実につかむことと、要素同士の関係性を理解することによって成り立ちます。この二軸の構造化が、論理構造図として可視化されます。QNKSの「問い(Q)・抜き出し(N)・組み立て(K)・整理(S)」は、概念のパーツを集め、関係性で組み上げ、整理していく思考プロセスとして機能しています。

ここで大切な前提があります。子どもたちは学校に来るとき、まっさらの状態ではありません。生活経験を通じて、すでに自分なりの見方や考え方を働かせて世界に向き合っています。その既有の概念は、科学的に正確かどうかという観点からすると「誤概念」と呼ばれることもある。学習とは、そのもともとある概念に新たな概念を接続し、修正しながら概念変化を引き起こしていく過程です。さらに、習得した概念が次の単元や課題へとつながるとき、学習の転移が起きます。算数では前単元の概念が次の単元の足がかりになる、あの感覚です。こうした学習の本質を踏まえると、ICTが何のために機能するべきかが明確になってきます。

単元の導入:全体を先に見渡し、骨格をつくる

単元の冒頭でまず行うことは、教科書全体をざっと見渡し、この単元がどのような構成要素でできており、それらがどのような関係性になっているかをつかむことです。

具体的には、各ページのまとめや問いを先に拾い出します。まとめが3〜4個あり、それぞれに対応する問いがある。その構造を付箋と線で組み立て、単元全体の概念構造図をまず描いてしまいます。これがQNKSの「問い(Q)→抜き出し(N)→組み立て(K)→整理(S)」を導入段階に使う実践です。

「まだ習っていないのに教科書のまとめを先に見るのはズルではないか」という感覚があるかもしれません。しかしそれは逆です。全体像を知らずに1ページ目から丁寧に読み進めるほうが、むしろ学びにくい。デッサンと同じで、最初に全体のバランスを取る楕円形を描いてから細部を書き込んでいくように、骨格をつかんでから学習を進めることが主体的な学びを支えます。

この段階でできた概念構造図は「骨だけ」の状態です。まとめと問いを粗く並べた、すっかすかの骨格。それでよいのです。骨があるから、次に肉をつけることができます。

QNKSの基本構造
QNKSの基本構造

問い(Q)・抜き出し(N)・組み立て(K)・整理(S)の4ステップが単元という時間軸の中でどう機能するかを意識しておくことが、この先の実践の骨子になります。

けテぶれで骨に肉をつける:途中の学習とICTの出番

骨格ができたら、けテぶれのフェーズです。

算数では問題を解く、理科では実験をやってみる、体育では実際に飛んでみる、図工では作ってみる。学習の中間は「やってみる⇆考える」の往還です。やってみて、うまくいかないことを分析し、また試す。このサイクルがけテぶれの本質です。

このフェーズで意識的に組み込みたいことがあります。けテぶれを回しながら「ここが大事だ」「これがコツだ」と気づいた瞬間に、それを抜き出し(N)として取り出し、最初につくった概念構造図に追加していくことです。

導入で描いた骨の図に、学習をとおして見えてきた要素をどんどん書き足していく。単元の中盤を越えるほどに、その図は精緻になっていきます。

ここでICTが機能します。ノートに構造図を書いてしまうと、要素を追加するたびに図が崩れ、整理し直すたびに全体を書き直すしかなくなります。ICTのホワイトボードなら、付箋を追加し、線の向きを変え、似た要素を統合して一枚にまとめることが何度でもできます。「ぐちゃぐちゃになったら構造図を更新する」というサイクルを、ICTは圧倒的に軽くします。 これが再編集可能性の実態です。

QNKSでサンドイッチする:単元末の語り

肉付けが重なり、概念構造図が「この単元の学び」を体現する形に育ったとき、単元末にやることが見えてきます。

「この単元とは何か」という大きな問いに対する答えを、自分の言葉で整理(S)し、語りきることです。 自分が学習をとおして組み立て、何度も再編集した構造をもとに、この単元の全体像を総括する。それが単元まとめの語りです。

この一連の流れが「QNKSでサンドイッチする」実践です。

  • 導入:QNKSで単元全体の問い・まとめを拾い、骨格の概念構造図をつくる
  • 中間:けテぶれで試行しながら見つけた重要ポイントを抜き出し、構造図に追加・再編集する
  • 終末:再編集された構造をもとに、自分の言葉でこの単元を語り、整理する

前後をQNKSが挟み、中間をけテぶれが動かす。ICTは、その中間で概念構造を繰り返し組み替える過程を支えます。

けテぶれとQNKSの組み合わせ
けテぶれとQNKSの組み合わせ

QNKSとけテぶれは対立するものではなく、単元という時間軸の中で役割を分担しながら互いを補い合っています。単元全体の見通しをもつQNKSと、一つひとつを試していくけテぶれが組み合わさることで、学習の往還が単元レベルの概念構造の深まりとして結実します。

全教科で使える実践パッケージとして

この学習過程は、特定の教科に限りません。

算数では解法の構造を、理科では実験から見えた自然の仕組みを、国語では物語の構成要素と関係を、体育では技能のポイントを、それぞれ「問い→抜き出し→組み立て→整理」の枠で構造化できます。単元の冒頭で全体を見渡し、やりながら重要ポイントを書き足し、最後に自分の言葉で語りきる――このパッケージはすべての教科で成立します。実技教科でも、「この単元でつかむべき技能や感覚の構造」を事前に粗くとらえ、練習しながら発見を追加し、最後に総括するという流れは変わりません。

ICTを使う根拠は、「タブレットがあるから使う」でも「共有しやすいから使う」でもなく、「概念構造を何度でも組み替えながら深めたいから使う」というところに置く。その発想の順序が、ICT活用を本質的なものにします。

学習の本質は概念習得にあり、概念習得には構造の再編集が欠かせません。そしてその再編集を最も自然に支えられるのがICTです。情報共有から一歩踏み込んだとき、ICTは学びのコントローラーとして本来の力を発揮します。

この記事が参考になったらシェア

Share