この記事では、ある教科で学んだ知識やスキルを他の場面で応用する「転移」の難しさを指摘します。
そして、その課題を乗り越える鍵として、思考のプロセスを型化したフレームワーク「QNKS」を紹介します。
QNKSを教科横断的な「共通言語」として使うことで、子どもたちは自律的に学びを繋げ、応用する力を育むことができます。
はじめに:名古屋でのオフ会から見えた教育の課題 先日、名古屋の小学校で校内研修があり、その前日にけテぶれ学習法を実践されている方々とオフ会を開催しました。10名弱の方が集まってくださり、夕方まで教育について熱く語り合いました。
参加してくださる方々は、オンラインサロン「けテぶれサロンプラス」に入会し、さらにリアルな場に参加するという高いハードルを越えて来てくださる、非常に熱意のある方々です。今回も、体育教育を熱心に研究されている方と深くお話しする機会があり、非常に有意義な時間となりました。
その中で特に盛り上がったのが、「体育の授業で、子どもたちの思考をどう深めるか」というテーマです。
【お知らせ】オールけテぶれフェスタと今後のイベント告知について 本題に入る前に、一つお知らせです。
先日告知した「オールけテぶれフェスタ2024」ですが、おかげさまで募集開始から24時間ほどで満席となってしまいました。現在、会場を調整し、もう少し参加枠を増やせるよう動いていますので、参加を希望されていた方は続報をお待ちください。
今回のように、イベントの告知は今後、以下の順番で行う予定です。
1. 先行告知:有料オンラインサロン「けテぶれサロンプラス」内 2. 二次募集:Facebookグループ「けテぶれサロン」内 3. 一般公開:TwitterなどのSNS
少人数制の講座なども企画しておりますので、情報をいち早くキャッチしたい方は、ぜひいずれかのコミュニティにご参加ください。
体育の授業で「思考」をどう深めるか? オフ会での議論の中心は、「体育の楽しさを担保しつつ、思考を深める活動をどう取り入れるか」という点でした。
体育の授業で話し合いや思考活動に時間をかけすぎると、本来最も重要な運動量が確保できなくなってしまうというジレンマがあります。そこで、「話し合うスキル」や「考えるスキル」は他教科で育て、体育ではそのスキルをスムーズに活用できる状態が理想ではないか、という話になりました。
そのための武器として、思考のフレームワークである「QNKS」が使えるのではないか、という提案が挙がったのです。
学習における「転移の壁」とは? QNKSがなぜ教科横断的なツールとなり得るのか。その理由を説明するために、まずは学習における「転移」の難しさについてお話しします。
転移とは、ある文脈で得た知識や技能を、別の文脈で応用することを指します。実はこの転移は、私たちが考える以上に非常に起こりにくい現象です。
例えば、国語の授業で「話し合いの進め方」という単元を学習したとします。子どもたちは、意見の出し方やまとめ方といった作法を学びます。では、その数週間後、学級会で「お楽しみ会」について話し合う場面が来たとしましょう。
この時、子どもたちは国語で学んだスキルを自発的に活用できるでしょうか?
多くの場合、答えは「No」です。これは、子どもたちの認知の特性に関係しています。 子どもたちにとって、「国語の話し合い」はあくまで国語の勉強という文脈の中で学んだスキルです。一方、「学級会」は国語とは異なる文脈です。そのため、「学級会のやり方は習っていないから分からない」という思考に陥ってしまうのです。
このように、特定の文脈で学んだことを他の文脈に置き換えることは、人間の認知にとって非常に難しい課題なのです。
「転移の壁」を乗り越える鍵はQNKSという「共通言語」 この「転移の壁」を乗り越えるための強力なアプローチが、QNKSという普遍的な概念(言葉)を導入することです。
実は、国語の教科書に出てくる表現活動は、そのほとんどがQNKSのプロセスで説明できます。
- 話し合いの単元:みんなから意見を集め(Question, Nukidashi)、グループ分けして構造化し(Kumitate)、納得できる形で結論を出す(Seiri)。
- 作文や俳句の単元:材料を集め(Question, Nukidashi)、構成を考え(Kumitate)、文章や作品として表現する(Seiri)。
これらの活動は、本質的には同じ思考のプロセスを辿っています。しかし、それぞれを「話し合いのやり方」「俳句の作り方」と個別のスキルとして学んでいるため、応用が利きません。「俳句の作り方は習ったけど、作文の作り方は習っていない」という状態になってしまうのです。
そこで、QNKSという全ての活動を貫く「共通言語」を導入します。
子どもたちが「今日はQNKSを使って話し合いをするんだ」「次はQNKSを使って俳句を作るんだ」と認識するようになれば、話は変わります。彼らは個別のスキルを学ぶのではなく、「QNKSという思考の型を、話し合いや俳句というフィールドで練習している」と捉えるようになります。
具体的な行為と結びついた概念だからこそ強い QNKSの最大の強みは、単なる抽象的な概念ではなく、具体的な行為と固く結びついている点です。
- Question(問い)
- Nukidashi(抜き出し)
- Kumitate(組み立て)
- Seiri(整理)
この4つのステップは、子どもたちが実際に手を動かし、頭を働かせるための具体的な道筋を示します。「わかる」だけでなく「できる」レベルまで落とし込まれているからこそ、強力なツールとなるのです。
まとめ:QNKSで全ての学びを繋げる QNKSという共通言語を持つことで、子どもたちの学習は劇的に変わります。
体育でQNKSを使って作戦を立てた経験が、国語で作文を書くときに活かされる。算数で使ったQNKSが、理科の実験レポートにも応用される。学級会での話し合いになっても、子どもたちから「先生、QNKSを使えばいいんだね!」という声が自然に上がるようになります。
このように、QNKSは全ての学習に横串を通し、「転移」を当たり前のものにします。国語で学んだ思考の方法を、体育の場面でもごく自然に活用できるようになるのです。
次回予告 今回は「体育×QNKS」というテーマから、学習の「転移」という大きな課題とその解決策についてお話ししました。
次回は、本来お話しする予定だった「体育×けテぶれ」をテーマに、具体的な実践について深掘りしていきたいと思います。どうぞお楽しみに。