社会科の目標は、教科書の内容を覚えることだけではありません。学習指導要領が示している中心は、平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な「公民としての資質能力の基礎」を育てることです。
そのためには、社会的な見方・考え方を働かせ、課題を追求したり解決したりする活動が必要になります。資料を調べ、まとめ、考え、判断し、表現する。その一連の学習過程を、子どもが実際に行う場として設計しなければなりません。
ここで重要になるのが、QNKSとけテぶれです。QNKSは、資料や教科書から情報を調べまとめる力、説明し議論する力を毎授業で育てる足場になります。けテぶれ、とくに生活けテぶれは、社会科で学んだ知識や見方・考え方を、クラスという子どもにとって本物の社会で使うための継続的な問題解決過程になります。
社会科を、教科書内の知識や豆知識の伝達に閉じ込めてしまうと、公民としての資質能力には届きにくくなります。社会科、学級活動、係活動、会社活動、発達支持的生徒指導を連動させ、クラスを「社会的な見方・考え方を働かせる本番の場」として捉えることが、実践上の大きな鍵になります。
社会科の目標は「公民としての資質能力の基礎」を育てること
社会科の教科目標は、社会的な見方・考え方を働かせ、課題を追求したり解決したりする活動を通して、グローバル化する国際社会に主体的に生きる力を育てることにあります。より大きく言えば、平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な、公民としての資質能力の基礎を育成することです。
ここでまず押さえたいのは、社会科が「社会のことを詳しく知る教科」だけではないという点です。もちろん地域、都道府県、国土、歴史、産業、政治などの知識は大切です。しかし、それらの知識は最終的に、子どもが社会の形成者としてどう考え、どう判断し、どう関わるかに接続される必要があります。
学習指導要領3観点で見ると、社会科の目標は大きく、知識及び技能、思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力・人間性等に整理されます。社会科の場合、この3観点はかなりはっきりと、公民としての資質能力に向かって組み立てられています。
知識及び技能では、地域や我が国の国土、社会の仕組み、歴史や伝統文化などを通して、社会生活について理解することが求められます。さらに、様々な資料や調査活動を通して、情報を適切に調べまとめる技能を身につけることも明記されています。
思考力・判断力・表現力等では、社会的事象の特色や相互の関連、意味を多角的に考えたり、社会に見られる課題を把握して、その解決に向けて社会への関わり方を選択・判断したりする力が求められます。そして、考えたことや判断したことを適切に表現する力も含まれます。
学びに向かう力では、よりよい社会を考え、主体的に問題解決しようとする態度が示されます。ただし、この部分は「愛情」「自覚」「誇り」といった内面的な語が多く、評価や指導の対象としては曖昧になりやすいところです。だからこそ、単に内面の有無を見るのではなく、主体的に問題解決へ向かう具体的な力として捉え直す必要があります。
社会科の中心は、教科書の内容を教えることではなく、社会の形成者として必要な資質能力を育てることです。
情報を調べまとめる技能は、QNKSで毎授業育てられる
社会科の知識及び技能の目標には、「様々な資料や調査活動を通じて、情報を適切に調べまとめる技能を身につける」とあります。ここは、QNKSと非常に強く接続します。
社会科では、資料の読み取り、地図、統計、写真、年表、図表、本文の整理などが頻繁に扱われます。社会科見学や調査活動も、ここに位置づきます。つまり社会科は、情報活用能力を育てる場でもあるということです。
学習の基盤となる資質能力には、言語能力、情報活用能力、問題発見解決能力などが含まれます。社会科の「資料を調べまとめる技能」は、まさにこの情報活用能力に当たります。そして、それを毎授業の中で扱う方法として、QNKSが機能します。
QNKSで社会の教科書をまとめることは、単なるノート整理ではありません。教科書や資料から問いを立て、必要な情報を拾い、構造化し、自分の言葉で説明できるようにする活動です。これは、社会科の目標である「情報を適切に調べまとめる技能」を日常的に育てる実践になります。

ここで注意したいのは、教師が板書し、それを子どもが写すだけの授業では、この技能は育ちにくいということです。板書を写すことは、整理された結果を受け取る活動です。もちろん、教師の整理が必要な場面はあります。しかし、それだけでは「自分で資料を調べ、まとめる」経験にはなりません。
たとえば、新聞作りの活動で資料をまとめる場面を設定することはできます。しかし、もしその力を新聞作りのときだけ育てるのだとしたら、頻度としては十分ではありません。社会科の資料活用は、単元の特別な活動で一度だけ扱うものではなく、毎授業の学習過程に埋め込めるものです。
ここで素朴理論に陥らないことも大切です。「板書もよい」「新聞作りもよい」「まとめ方はいろいろでよい」と、基準なく並べてしまうと、何が社会科の目標に照らして妥当なのかが見えなくなります。教師は、公的な評価基準として学習指導要領を参照し、「情報を適切に調べまとめる技能を、いつ、どのように育てているのか」を説明できる必要があります。
QNKSは、社会科の授業を根拠ある実践にするための手段です。情報活用能力を育てるという目標に照らしたとき、毎授業で子どもが自分で読み、選び、まとめ、説明する仕組みを持つことには大きな意味があります。
社会科を教科書の中に閉じ込めない
社会科で扱う内容は、学年が上がるにつれて広がっていきます。3年生では地域社会、4年生では都道府県、5年生では国土や産業、6年生では歴史や政治へと広がります。
この広がりは大切です。一方で、子どもにとって「社会への関わり方を選択・判断する」範囲が大きくなりすぎると、学びが机上の空論になりやすくなります。国の課題を考えることは重要ですが、小学生がすぐに国政へ直接働きかけることは簡単ではありません。
だからこそ、社会科で学んだことを、子どもが実際に関われる身近な社会へ接続する必要があります。その最も身近で、本物の社会がクラスです。
クラスには、役割があります。ルールがあります。意見の違いがあります。協力も対立もあります。多数決で決めることもあれば、少数意見をどう扱うかが問われることもあります。係活動、会社活動、学級会、班活動、委員会活動などは、子どもが社会の形成者としてふるまう具体的な場です。
社会科で歴史を学ぶときも、単に過去の出来事を覚えるだけでは不十分です。人間はどのような状況で混乱を起こすのか。どのような働きかけで社会がよくなるのか。複数の立場があるとき、人はどのように判断するのか。そうした学びを、今の自分たちの教室や生活に照らして考えることができます。
これは、社会科を学級経営に都合よく利用するという話ではありません。むしろ、社会科が本来目指している公民としての資質能力を、子どもにとって地に足のついた場で育てるということです。
クラスは、社会的な見方・考え方を働かせる本番のステージです。
学級会・係活動・会社活動は、公民的資質を育てる実践の場になる
社会科の目標には、社会に見られる課題を把握し、その解決に向けて社会への関わり方を選択・判断する力が含まれています。この「社会への関わり方」を、子どもが実際に選択・判断できる範囲で考えると、学級会、係活動、会社活動は非常に重要な場になります。
たとえば、クラスの生活上の課題を見つける。なぜその課題が起きているのかを考える。関係する人の立場を想像する。改善案を出す。話し合う。実行する。結果を振り返る。必要なら修正する。
これは、社会科で求められている課題追求・解決の学習過程そのものです。知識や技能を活用して調べ、思考し、判断し、表現しながら課題を解決する過程です。
ここに、協働的な学びがあります。自分一人で考えるだけでなく、他者と協働的に追求し、追求結果を振り返ってまとめたり、新たな問いを見出したりする学習過程です。これは、主体的・対話的で深い学び、つまりSTFトライアングルとも接続します。

社会科の時間だけで、毎単元すべてに大がかりなパフォーマンス課題を設定しようとすると、持続可能性の問題が出てきます。もちろん、単元の中でパフォーマンス課題を設定することには価値があります。しかし、それだけで社会科の資質能力を育てようとすると、教師にも子どもにも負荷が大きくなりがちです。
そこで、生活けテぶれとの連動が重要になります。社会科の中で学んだ知識や見方・考え方を、学級会や係活動、会社活動の中で実際に使う。学級生活の課題を、社会的な見方・考え方で捉え直す。そうすることで、社会科の学びは教科内に閉じず、学校生活全体に開かれていきます。
発達支持的生徒指導とも、ここでつながります。学級から学年へ、学年から学校へと、子どもが関わる社会の範囲は少しずつ広がっていきます。低学年・中学年では学級の係や当番活動、高学年では委員会活動などを通して、より広い集団の形成者としての経験を積むことができます。
社会的自立は、突然18歳になって身につくものではありません。日々のクラスの中で、自分たちの生活を自分たちでよくしていく経験を積むことが、その基礎になります。
生活けテぶれは、社会的な見方・考え方を教室で実践する過程である
社会的な見方・考え方とは、社会的事象の意味や意義、特色や相互の関連を考察したり、社会に見られる課題を把握してその解決に向けて構想したりする際の視点や方法です。
小学校社会科では、社会的事象の見方・考え方として、位置や空間的な広がり、時期や時間の経過、事象や人々の相互関係などに着目します。そして、社会的事象を比較・分類したり、総合したり、地域の人々や国民の生活と関連づけたりします。
ここで大切なのは、「地域の人々」や「国民」を他人事にしないことです。地域の人々とは、子ども自身を含む存在です。国民とは、子ども自身を含む存在です。そして、クラスの形成者もまた、子ども自身です。
社会的な見方・考え方を働かせる対象は、教科書の中の社会的事象だけではありません。クラスも社会的事象として捉えることができます。班の中の関係、係活動の停滞、学級会での合意形成、教室のルール、行事への関わり方なども、子どもにとっては本物の社会です。
このとき、生活けテぶれが機能します。生活の中にある課題を見つけ、計画し、実行し、振り返り、改善する。これは、社会的な見方・考え方を教室で実践するための継続的な問題解決過程です。

けテぶれは、単なる学習法ではありません。生活けテぶれとして扱うと、学級生活の問題解決に向かう実践になります。社会科で学んだことを、クラスという社会に反映させる回路になります。
たとえば、歴史の学習で「社会が混乱するときには、利害の対立や情報の偏りが関係する」と学んだとします。その知識を、クラスの話し合いに生かすことができます。ある係活動がうまくいっていないとき、誰の立場が見落とされているのか、情報は共有されているのか、目的はそろっているのかを考えることができます。
また、産業や地域社会の学習で「役割分担や協力によって社会が成り立っている」と学んだなら、会社活動や係活動を見直す視点になります。自分たちの活動は誰の役に立っているのか。役割は偏っていないか。活動の目的はクラスの生活とつながっているか。こうした問いは、社会科の学びを生活に戻す問いです。
この連動があると、社会科は「学んで終わり」ではなくなります。子どもは、社会科で得た知識や見方・考え方を使って、自分たちの生活を少しずつよくしていくことができます。
学びに向かう力を、内面評価だけで扱わない
社会科の学びに向かう力には、よりよい社会を考え、主体的に問題解決しようとする態度が含まれます。また、地域社会に対する誇りと愛情、地域社会の一員としての自覚、我が国の国土や歴史に対する愛情、国民としての自覚、世界の人々と共に生きることの大切さについての自覚なども示されています。
しかし、ここには注意が必要です。愛情や自覚の有無を、そのまま評価しようとすると、非常に曖昧になります。子どもの内面を、教師がどこまで判断できるのかという問題もあります。
だからこそ、「学びに向かう態度」を、内面の有無だけで処理してはいけません。より具体的に、「学びに向かう力」として捉える必要があります。つまり、よりよい社会を考え、課題を見つけ、解決の見通しをもち、他者と協働し、振り返り、改善しようとする力として見るのです。
このように捉えると、けテぶれとQNKSが再び見えてきます。QNKSは、情報を調べまとめる力、説明する力、議論する力を支えます。けテぶれは、問題を発見し、解決へ向かう過程を支えます。
学びに向かう力は、「この子は地域を愛しているか」「国を大切に思っているか」といった内面の判定だけではなく、実際に課題解決に向かってどう動いているかとして見取ることができます。現在地を捉え、フィードバックし、次の行動につなげることができます。
教師に求められるのは、子どもの内面を決めつけることではありません。子どもが社会の形成者として考え、判断し、表現し、行動しようとする場をつくることです。そして、その過程を丁寧に見取り、必要な語りやフィードバックを返すことです。
社会科の課題追求・解決は、一連の学習過程として設計する
社会科の資質能力は、習得した知識や技能を活用して、調べたり、思考・判断したり、表現したりしながら課題を解決する一連の学習過程において育成されます。
これは非常に重要です。教師が説明し、子どもが聞き、板書を写すだけでは、資質能力の育成には届きにくいのです。子ども自身が知識や技能を使い、実際に考え、判断し、表現する場が必要です。
この学習過程は、次のように整理できます。
1. 社会的事象から問いや課題を見出す。 2. 解決の見通しをもつ。 3. 資料や調査を通して情報を集め、まとめる。 4. 他者と協働して考える。 5. 選択・判断し、表現する。 6. 結果を振り返り、新たな問いを見出す。
この流れは、QNKSとけテぶれの両方に接続します。QNKSは、資料を読み、情報を整理し、説明や議論へつなげる部分を支えます。けテぶれは、課題を見つけ、計画し、実行し、振り返り、改善する過程を支えます。
社会科の時間では、教科書や資料を通して社会的事象を学びます。一方で、学級生活では、子どもが実際に関わる社会的事象が目の前にあります。この二つを切り離さず、往復させることが大切です。
教科書で社会を学び、クラスで社会を生きる。クラスで起きた課題を、社会科の見方・考え方で捉え直す。この往復によって、社会科は知識の習得にとどまらず、公民としての資質能力の基礎を育てる教科になります。
多面的・多角的に考える力を、教室で使える力にする
社会科では、多面的・多角的に考えることも重視されます。
多面的に考えるとは、一つの事象をいろいろな面から見ることです。たとえば、地域の商店街について考えるとき、買い物をする人、店を営む人、観光客、行政、交通、歴史など、複数の面から捉えることができます。
多角的に考えるとは、複数の立場や意見を踏まえて考えることです。自分から見ればよい案でも、別の立場から見ると困ることがあるかもしれません。相手の立場や根拠を明確にしながら考える力です。
この力も、クラスの中で使えます。学級会で新しいルールを決めるとき、自分の都合だけで考えるのではなく、困っている人、活動を進める人、時間を管理する人、まだ意見を言えていない人の立場を考える必要があります。係活動を見直すときも、活動する側、受け取る側、継続する負担など、複数の面から考える必要があります。
社会科で学ぶ多面的・多角的な思考は、教科書の問題を解くためだけのものではありません。教室という社会で、よりよい関わり方を選択・判断するための力です。
表現力は、説明する力と議論する力として育てる
社会科における表現力は、考えたことや選択・判断したことを説明する力、そしてそれをもとに議論する力として捉えられます。
説明する力とは、根拠や理由を明確にして、社会的事象について調べて理解したことや、自分の考えを論理的に伝える力です。ここでもQNKSが生きます。情報を整理し、構造化し、根拠をもって説明することは、QNKSの守備範囲です。
議論する力とは、他者の主張につなげたり、相手の立場や根拠を明確にしたりしながら、自分の考えを主張する力です。これも、単に発表が上手になるという話ではありません。根拠を持ち、相手の考えを受け止め、自分の判断を更新していく力です。
学級会や会社活動では、この表現力が実際に必要になります。自分たちの活動を改善するためには、考えを説明しなければなりません。意見が分かれたときには、理由や根拠を出し合い、議論しなければなりません。
社会科の表現力を、社会科の時間だけで完結させるのではなく、クラスの活動の中で使う。ここに、教科横断的な学びの具体的な姿があります。
社会科、学級活動、発達支持的生徒指導を連動させる
社会科で育てたい公民としての資質能力は、社会科の時間だけで完結するものではありません。道徳が学校生活全体と関わるように、社会科もまた、学校生活全体と関わります。
社会科の時間では、社会的な見方・考え方を働かせるための知識や技能を学びます。学級活動では、それを実際に使って、自分たちの生活をつくります。発達支持的生徒指導では、子どもが社会的自立へ向かう過程を、学級、学年、学校という広がりの中で支えます。
この三つを切り離してしまうと、社会科は知識の伝達に寄りやすくなります。逆に、この三つを連動させると、社会科の学びは子どもの生活に根づきます。
クラスでうまくいかないことがある。係活動が形だけになっている。学級会が一部の子だけの発言で進んでしまう。委員会活動が作業化している。こうした場面は、単なる生活指導の問題ではありません。社会的な見方・考え方を働かせ、公民としての資質能力を育てる機会でもあります。
社会科で学んだことを、クラスで使う。クラスで起きたことを、社会科の見方で捉え直す。これを繰り返すことで、子どもは「社会は自分と関係がある」と実感しやすくなります。
社会科は、子どもが社会をつくる経験へ向かう
社会科を、教科書の内容や豆知識の伝達だけに矮小化してはいけません。社会科の時間は、子どもの大切な時間です。その時間は、教師の知識を披露するためだけにあるのではなく、公民としての資質能力の基礎を育てるためにあります。
もちろん、知識は必要です。教科書を読むことも、資料を読み取ることも、歴史や地理や政治の基本を理解することも欠かせません。しかし、その知識は、子どもが自分の社会生活に適応し、よりよい社会をつくろうとするために使われるべきものです。
子どもにとって最も身近な社会は、クラスです。そこから学年、学校、地域、国家、世界へと視野は広がっていきます。だからこそ、まずはクラスという本物の社会で、社会的な見方・考え方を働かせる経験を大切にしたいのです。
QNKSで情報を調べまとめる。けテぶれで生活の課題を見つけ、解決に向かう。学級会、係活動、会社活動で、他者と協働しながらよりよいクラスをつくる。そこに、社会科の目標と学級経営と発達支持的生徒指導が重なります。
社会科は、教科書の中の社会を学ぶ教科であると同時に、教室の社会をよりよくつくるための教科です。
この視点を持つと、社会科の授業デザインは変わります。資料を読む活動は、情報活用能力を育てる活動になります。話し合いは、協働的な学びになります。生活けテぶれは、社会的な見方・考え方を働かせる継続的な問題解決過程になります。
社会科の学びを、子どもが生きているクラスという社会に戻すこと。そこから、公民としての資質能力の基礎は、少しずつ育っていきます。