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けテぶれ学習法で組織を動かす!子どもと大人が共に成長する校内研修デザイン

けテぶれ自律した学習者主体的な学び振り返り学び方の学び方

本記事では、子どもの自律的な学習を促す「けテぶれ」のフレームワークを、学校の校内研修に応用する方法を提案します。

目的・目標を共有し、手段は各教員の裁量に任せつつ、振り返りの型として「けテぶれシート」を活用します。

これにより、教員一人ひとりが自律的に学び、学校全体が成長する持続可能なサイクルを生み出すことを目指します。

はじめに:大人の学びと子どもの学びを「相似形」にする 教育現場では、「大人の学びの場(教員研修)と子どもの学びの場を相似形にすべきだ」という考え方があります。子どもたちに自律的な学習者になってほしいと願うなら、まず私たち大人(教員)が自律的な学習者として学び続ける姿勢を示すことが重要です。

この考え方を具体的に実現するのが、けテぶれ学習法のフレームワークを校内研修に導入するアプローチです。今回は、多様な教員が所属する一般的な学校組織を活性化させるための、具体的な研修デザインについて解説します。

基本方針:手法ファーストではなく「目標ファースト」で進める

1. 共有すべきは「目的」と「目標」 研修デザインを考える上で最も重要なのは、目的目標を明確に共有することです。

  • 目的: 教育基本法第一条にもある「人格の完成」という究極的なゴール。
  • 目標: 各学校が定める「学校教育目標」。

多くの学校では、学校教育目標は「自主」「共同」「創造」という3つの柱に集約される傾向があります。これは、かつての「知・徳・体」から時代と共に変化してきた流れとも言えます。

まずは、この学校教育目標を達成するという共通認識を、全職員で持つことが出発点となります。

2. 「手法の強制」は失敗のもと 「けテぶれを全校で実践するぞ!」といった、特定の手法をトップダウンで強制する手法ファーストのアプローチは、多くの場合うまくいきません。職員室には、熱意ある若手から経験豊富なベテラン、プライベートで多忙な方まで、様々な状況の先生方がいます。

「うちの学校の先生はやる気がない」「考えが古い」と諦めるのは、「このクラスは学力が低いから」と指導を諦めるのと同じです。多様な教員がいることは、阻害条件ではなく、乗り越えるべき前提条件として捉えるべきです。

したがって、目指すべき目標は共有しつつも、そこへ至る手段は自由であるべきです。それぞれの教員が持つスタイルや方法論を尊重し、その上で学び合いを促進する仕組みを構築します。

具体的な研修デザインの進め方

ステップ1:振り返りの型「けテぶれシート」の導入 研修の核となるツールが「けテぶれシート」です(名称は学校の実態に合わせて変更可能です)。教員が自身の教育活動を振り返り、次のアクションにつなげるための共通フォーマットとして活用します。

けテぶれシートの基本構成 - 計画: 今月(今学期)の学年・学級での取り組み目標を記述します。 - 分析(振り返り): - プラス(+): 目標に対して成功したこと。 - マイナス(-): 目標に対してうまくいかなかったこと、失敗とその理由。 - 矢印(→): 次にどうするかの改善策やアクションプラン。 - メタ認知: - びっくりマーク(!): 活動を通じた重要な気づき。 - はてなマーク(?): 今後も考え続けたい問い。

ステップ2:研究部会で学習サイクルを回す この「けテぶれシート」を使い、月1回の研究部会を軸にPDCAサイクルを回していきます。

1. 【第1回:4月】計画の立案 - シートの活用方法を説明します。 - 学校教育目標や研究主題に基づき、各学年で「どのような取り組みができそうか」を話し合い、大まかな方向性を決めます。

2. 【第2回:5月】目標の共有 - 各学年で具体化した取り組みの目標(計画)を「けテぶれシート」に記入し、持ち寄ります。 - オンラインホワイトボードなどを活用し、全学年の目標を可視化・共有します。これにより、学年間の連携の可能性を探ります。

3. 【第3回以降:6月〜】振り返りと次の計画 - 部会員の役割: 部会の担当者は、次の部会までの1ヶ月間、週1回程度の学年打ち合わせの場で、各学級の取り組み状況(プラス・マイナス)をヒアリングし、シートに集約します。 - 部会での分析: 各学年から持ち寄られたシートを元に、思考のフレームワークであるQNKS(問い→抜き出し→組み立て→整理)を用いて、学校全体の成果や課題を分析します。 - Question(問い): 学校全体として、今どのような状況にあるか? - Nukidashi(抜き出し): 各学年の成果(プラス)と課題(マイナス)を抜き出す。 - Kumitate(組み立て): 成果や課題の共通点・相違点から、学校全体の傾向を構造化する。 - Seiri(整理): 次に取り組むべきことや、学年を超えて共有すべき知見を整理する。 - 次の計画へ: 分析結果を元に、各学年で次の1ヶ月の計画(矢印)を立て、シートに記入して持ち帰ります。

このサイクルを毎月繰り返すことで、実践と振り返りが連動し、組織全体の学びが深まっていきます。

ステップ3:研究全体会と授業公開を連動させる 一方的な報告会になりがちな研究全体会を、教員同士が本質的に学び合える場へと変革します。

学期に一度の研究全体会 - 全体発表: その学期で特に優れた取り組みを行った学級・学年を研究部会が選出し、全体に向けて発表してもらいます。これは、学校全体で目指す方向性を示すモデルとなります。 - ポスター発表: 全体発表以外の学年は、自分たちの取り組みをポスター形式で発表します。参加者は興味のあるブースを自由に回り、質疑応答を通じて学びを深めます。 - 対話と計画: 最後に、学年ごとに集まり、その日の学びを元に次学期の計画を「けテぶれシート」にまとめます。

日常的な授業公開 「研究授業」のような特別な一回限りのイベントではなく、日常的に互いの授業を見合う文化を醸成します。

  • 相互参観の仕組み化: 例えば、「奇数学年が5時間目の授業を行う日に、偶数学年の教員は授業を参観する」といった時間を定期的に(月1回など)設けます。
  • 日常の実践を公開: 特別な準備をした授業ではなく、普段の実践を見せ合うことで、より実践的な学び合いが生まれます。

この仕組みにより、優れた実践が自然と共有され、教員一人ひとりが刺激を受けながら成長していくことができます。

まとめ:自律的に学び合う組織文化を創る 今回提案した研修デザインは、けテぶれという子どものための学習法を、そのまま大人の組織運営に応用したものです。

  • 目標を共有し、手段は尊重する。
  • 共通の「振り返りの型」で対話を促す。
  • 特別なイベントではなく、日常のサイクルとして学びを定着させる。

このアプローチによって、教員一人ひとりが受け身ではなく、主体的に研修に参加し、自らの実践を更新し続ける「自律した学習者」となります。そして、そのような教員の集合体である学校は、変化に対応し、子どもたちのために成長し続ける、しなやかで強い組織になることができるはずです。